ソニーがゲームの性的表現に対し新たなガイドラインを設ける――レイティング機構とは別の独自のもの

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©2017 D3 PUBLISHER

Wall Street Journalの報告によるとソニーはPlayStationで販売されるゲームの性的な表現についてさらに厳格な基準を設けました。

現在各国で年齢制限などのレイティングが存在していますが、今回の決定はソニーがそれとは別の独自のガイドラインを設けることを意味します。

 

ソニーのアメリカ本部の関係者は「ソニーは法的及び社会的行動の標的になる可能性を懸念している」と語りました。

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最近のPSゲームに見る性的表現規制

 

ソニーはこのところ性的な表現に対して敏感になっています。

昨年発売された「閃乱カグラ Burst Re:Newal」では、搭載されたスキンシップ要素が性的であるとして、アメリカで販売を担当するXseed Games社はそのモードを削除しなければなりませんでした。

 

またディースリー・パブリッシャーのローグライクRPG「オメガラビリンスZ」のPS4とPSVita版は、“プラットフォームホルダーの意向により”発売がキャンセルされています。

(「オメガラビリンスZ」はイギリスで「Manhunt 2」以来の2番目となる販売禁止ゲームとなっています)

Xseed Games社は「プラットフォームホルダーの意向を尊重する」との声明を出しましたが、この決定はゲームの販売を待っていたファンだけでなく、翻訳し販売をする側も大きな損失を被る結果となりました。

 


 

ソニーの新しいガイドラインの設定には2つの要因があると考えられています。

1つは世界中で活発な動きを見せている#MeToo運動、もう1つがYouTubeやTwitchなどの配信サービスです。

世界中の人たちが女性を性的に搾取することに対して抗議の声を挙げており、たとえその非難が的を得ていなくても、バッシングを受けることは社会的なイメージの低下につながります。

そして配信サービスの隆盛は、ある地域では受け入れられている表現がそうでない地域でも容易に注目を集めるようになったことを意味します。

配信者が想定していない地域から批判を受けるのは珍しいことではなくなりました。

 

ソニーはPlayStationだけでなく、映画や音楽といった幅広いエンターテインメント事業を手掛けています。

彼らが時代の要請に沿った形で規制を強くするのは無理もないことかもしれません。

 

ソニーの関係者は「#MeToo運動を受けて突然ポリシーが変更された」と述べ、明確なガイドラインについてはまだ作成できていないと語っています。

 

新しい表現規制がゲーマーと他のハードホルダーに与える影響

 

©2018 Marvelous Inc./HONEY PARADE GAMES Inc.

 

元々日本はゲームの性的表現についてかなり寛容な地域性があります。

一方アメリカやヨーロッパなどは暴力的なゲームに寛容であるのに対し性的な表現には厳しい目が向けられます。

日本のキャラクターの多くが未成年のように“見える”ことも問題とされてきましたが、先に述べたXseed Games社の翻訳プロデューサーを務めたTom Lipschultz氏によると「規制は双方向性が問題でありもはやキャラクターの年齢を変えたとしても効果はない」と語っています。

 

注:このゲームに登場する人物は全て18歳以上です――このような注意書きをゲームの最初に入れる時代は終わってしまうのでしょうか。

 


 

規制を強化するソニーに対し任天堂は(これまでの同社の方向性に反して)ゲームの表現について寛容になりつつあります。

 

Wall Street Journalによると、任天堂は開発者に対し、販売する地域に適切なレイティングを適用することだけを要求しておりコンテンツに対しての規制はしていないと語りました。

これは各国に存在しているレイティング機構に従うものを作ればよいということです。

任天堂は元来ファミリー向けの製品を販売してきた実績がありますが、Nintendo Switchが幅広い年齢層に受け入れられていることもあり、最近ではいわゆる“ちょっとエッチ”なゲームも普通に販売されるようになってきています。

 

マイクロソフトが今回の動向にどのように反応するのか(または反応しないのか)は定かではありません。

しかしかつてXbox360時代に日本メーカーの作品を積極的に販売してきたのをみると、販売ルートを閉ざされたメーカーの受け皿になる可能性は十分に考えられるでしょう。

 


 

ある性的に露骨なタイトルを作る日本のスタジオは、作品を完成させた後でレビューを待つことに不満の声を漏らしています。

作品をレビューする側の気分によっては修正作業のためにスタッフを調整しなければならなくなり、それには費用がかかると述べています。

 

そんなきわどい作品を作らなければいいのではないか、そんな声も聞こえてきそうですがどんな世界にも多様性は必要です。

今回のソニーのポリシー変更は、PSゲーマーにとって少なくない影響を与えることになるかもしれません。

 

 

Source:Gamesindustry.biz