アメリカ政府の「学校の安全に関する連邦委員会(Federal Commission on School Safety)」は12月18日、映画やビデオゲームと暴力事件との関係性についてまとめた報告書を公開しました。
委員会は2018年2月にフロリダで起きた高校での銃撃事件を受けて発足しました。
トランプ大統領は、暴力的な映画やゲームが事件の発生と関わりがあるとしており、委員会は学校関係者や警察、カウンセラー、そしてメディアなどから情報を収集し、暴力事件が起こる背景について調査しました。
委員会は今回の報告で、暴力的なメディアと事件との関係性についてはっきりと言及するのを避けています。
ゲームが若い人たちに与える影響力について議論が起きているなか、委員会がどちらとも言えない結論を下した背景には、コンピューターゲームのレイティング団体「ESRB」の存在がありました。
ESRBの厳格なレイティング
ESRB(Entertainment Software Rating Board)は、アメリカ及びカナダのコンピュータゲームのレイティング団体で1994年に発足しました。
レイティングは年齢区分と内容の2点がセットになった形で、製品のパッケージにロゴマークとして表示されます。
法的強制力はなくメーカーの任意でレイティングを受ける形になっていますが、現状レイティングを通していないゲームは販売店が取り扱わないため、事実上必須となっています。
また17歳以上推奨のゲームに関しては、年齢に満たない者が購入する際に保護者の同意が必要になり、それ以上のレイティング――いわゆるアダルト区分――においては流通上不利になることが多く市場にはわずかな数しか存在していません。
ESRBの17歳以上推奨のロゴ。MはMature(成熟したという意味)の頭文字。ほとんどのゲームはこのレイティング以下に収まるように作られる
このような厳格な区分分けはメーカーのゲーム制作にも影響し、行き過ぎた性描写や暴力描写を含むものが、そもそも世に出てこないような仕組みが確立しています。
日本のレーティング機構CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)はESRBのやり方を取り入れて発足しましたが、判断基準や区分分けについては独自のものが採用されています。
ゲームと暴力との関係性よりも、銃へのアクセスのしやすさが問題
委員会がまとめた報告書は、学校で起きる暴力事件に直接関わる要因として“銃器の入手のしやすさ”を挙げ、映画やゲームが事件の直接の引き金にはなっていないと強調しています。
委員会は、ESRBの厳格なレイティングが、子供たちを暴力表現から守るのに大きな役割を果たしているとし、その効果を評価する姿勢を見せました。
ESRBの2016年の調査では、ビデオゲームをプレイする子供をもつ親の86%がESRBのレイティングを知っており、そのうちの73%が購入時の参考にしています。
委員会は、ゲームを規制するよりも、学校内でのインターネット接続を制限するほうが暴力事件の抑止に役立つと結論づけています。
委員会は犯行に使用された銃器の入手先や入手方法についても調べています。
多くの犯人は、自宅や親せきの家から銃器を調達しています。
この結果は、教育省とシークレットサービスの学校暴力事件のデータベースから導き出したもので、1974年から2000年にかけて起きた37の事件のうちの3分の2以上で、銃器は家族や親せきの家から持ち出されています。
また疾病予防管理センターの調査でも同様の結果が明らかになっています。
1992年から1999年の間に発生した暴力死亡事件についての調査では、犯行時に使われた銃器の23.4%が自宅から、27.6%が友人や親せきの家から持ち出されたことがわかっています。
委員会はこれらの結果から、銃を校内に持ち込ませないよう学校側が法執行機関と協力する必要があると指摘し、また同時に、訓練された職員や警備員を校内に配置することを検討するよう学校に求めました。
ESRBの代表は委員会の報告に「非常に満足している」と語っています。
事件とゲームを安易を結びつけるのはよくないけど、暴力的な作品が多くあるのも事実だから複雑な問題だね
刃物そのものが危ないんじゃなくて、それをどう使うのかが一番大事……
Source:Polygon