1912年に沈没した豪華客船タイタニック号の遺物の引き上げ作業を行っているRMS Titanic Inc.(RMST)は、裁判所に提出していた行動計画が認められたとして、今年中にも新たな回収ミッションを行うと発表しています。
RMSTは過去に5,000以上の遺物をタイタニックから引きあげていますが、船は沈没から長い時間がたっているため、裁判所は2000年に船内への侵入を禁止する命令を出しています。
今回RMSTが裁判所に提出したのは、無線電信を開発したグリエルモ・マルコーニの名を冠した通信室「マルコーニスイート」から、救難信号を送った電信機を引き上げる計画で、裁判所はそれを「歴史的、教育的、科学的、文化的価値がある」と判断しました。
通信室は水深約3,800メートルの場所にあり、電信機の回収はROV(遠隔操作の無人潜水機)によって行われます。
当時、発明されたばかりの無線電信は最先端の技術でした。
RMSTの社長であるブレトン・フンチャク氏は、「このラジオがなければ遭難信号を送ることはできず、誰も生き残っていなかっただろう」と説明し、またもしそうであれば、「タイタニック自体が発見されていなかったかもしれない」と話しています。
会社は8月下旬から9月にかけての捜索を計画していますが、現在のマルコーニスイートは腐食が進み崩壊の危険性があるため、悠長に構えている時間はそれほど多くはありません。
タイタニックと同じ構造の姉妹船オリンピックの通信室 (Public Domain/Wikimedia Commons)
作業に使われるROVは、海上の船からオペレーターが操作します。
しかし電信機は、船体を傷つけなければ取り出せない可能性があります。
今回裁判所は、船の一部分については撤去してもよいという許可を出していますが、危険を冒してまでサルベージを行う必要はないとする専門家もいます。
これについてフンチャク氏は、できるだけタイタニックを傷つけない計画を立てていると述べ、「部屋の屋根にはたくさんの穴があり、十分に小さな工具を使えば内部に到達できる可能性は高い」と強調しました。
また過去のサルベージの実績を挙げたうえで、「ここに来るのは初めてではなく、また自分たちが何を期待し、何ができるのかについては十分に理解している」と語っています。
実際の作業は、船内の3Dデータを元にしたシミュレーションを経たうえで行われます。
またミッションチームは遠征の前に、現場近くの海域で訓練を行うことになっています。
今回のサルベージに関しては、アメリカ海洋大気庁を含む多くのグループが反対の立場を表明しています。
電信機が回収されれば事故の状況が詳しくわかるかもしれないね
沈没から108年……サルベージで船体が崩壊しないか心配……
References: Business Insider