NASAは50年以上も活躍を続ける伝説のロックバンド、ローリング・ストーンズにちなみ、ある火星の石の名前を「ローリング・ストーンズ・ロック」と名付けたと発表しました。
これはローリング・ストーンズが現在行っているツアーと連動したもので、NASAの研究所であるJPL(ジェット推進研究所)があるカリフォルニア州パサデナにバンドが訪れていることから実現したものです。
(バンドが公演を行ったローズボウルはJPLから約5キロほど離れた場所にあります)
昨年11月に火星に到着した火星探査機インサイトは、その着陸時の逆噴射により近くの石を“転がしています”。
石は地面をこすり約1mほど移動しており、その動きが今回の命名につながりました。
転がり続ければ停滞することはない、という意味のバンド名にちなんだ今回の命名にメンバーは感謝を表し、ボーカルのミック・ジャガー氏は「これは間違いなく私たちの長くて波乱に満ちた歴史の節目です。それを実現してくれたNASAの皆さんに感謝します」とコメントしています。
50年以上も“転がり続け”世界中に素晴らしい音楽を届けてきたローリング・ストーンズは、火星にまでその名声と偉業を知らしめることになりました。
NASA Names “Rolling Stones Rock” on Mars
2018年11月26日に火星に到着したインサイトは、着陸の際にゴルフボール大の小さな石を約1mほど動かしています。
NASAによるとこの石は、現時点で確認できる最も遠い場所での“ローリング・ストーン”です。
今回のバンドにちなんだ石の命名についてNASAの惑星科学部門のロリ・グレイズ氏は、ローリング・ストーンズ・ロックという名前はぴったりなものだと述べます。
NASAの使命の一部は私たちの仕事を様々な聴衆と共有することです。ストーンズがパサデナにいることがわかったとき、このような形で彼らに敬意を表することは、世界中のファンに届く楽しい方法に思えました。
また俳優のロバート・ダウニー・ジュニア氏も8月22日に行われたバンドの公演の前にスピーチをし、インサイトが動かした石がローリング・ストーンズ・ロックと命名されたことを聴衆に告げました。
氏は「ロックバンドと科学という他家受粉は本当に良い物だ」と語っています。
Robert Downey Jr. Announces NASA’s ‘Rolling Stones Rock’
本来、小惑星や彗星さらには惑星上の地域や場所など、太陽系におけるそれらの正式な学名は、国際天文学連合によってのみ決定されますが、NASAは岩石やその他の地質学的特徴に多くの非公式の名前を付けてきました。
親しみやすい名前にすることは、科学者が議論をしやすくしたり論文での参照を容易にしたりするだけでなく、多くの一般の人にとっても宇宙を身近に感じることができるという点でメリットがあります。
今回名付けられたローリング・ストーンズ・ロックも非公式なものですが、NASAの火星における作業マップには正式に掲載されることになっています。
1997年以降NASAの火星ミッションの全てに関わってきたJPLの地質学者マット・ゴロンベック氏は、探査機が着陸する場所の安全性を評価するために、これまで様々な場所の火星の石を見てきました。
キャリアの中で数えきれないほどの石を見てきたゴロンベック氏はローリング・ストーンズ・ロックについて、「これはおそらく多くの科学論文には載らないでしょうが、間違いなく最もクールなものの1つです」と語っています。
一見するとなんの特徴もない石が、今回素晴らしい名前を付けられたことで一躍人々の関心を集めるようになりました。
地面に残る引きずったような跡は、常に前進しつづけるローリング・ストーンズの精神そのものです。
References:NASA