ヘルシンキ大学の考古学者チームは、ロシアにある石器時代の墓の調査を行い、埋葬された人物の周囲から、無数のヘラジカの歯を発見しています。
約8200年前の石器時代の墓は、カレリア共和国のオネガ湖に浮かぶ島の一つにあります。
この場所には多くの埋葬地が存在し、調査では84の墓から4300を超えるヘラジカの歯が見つかりました。
歯は人骨の頭や胸、腰回りに散らばっており、研究者はこれらを、死者のための装飾品であると推測しています。
ヘラジカの歯はコミュニティのアイデンティティを示すもの
墓からはビーバーやクマの歯も見つかっていますが、ヘラジカの歯の数は圧倒的で、多くの歯の先端部分には、溝のような加工の跡がありました。
この溝は紐などを括りつけて装飾品にするためのもので、一つのペンダントには、8本から18本の歯が使用されました。
最も多くヘラジカの歯が見つかったのは若い成人の男女の墓で、子供や高齢者の墓では少数でした。
この理由についてはよくわかっていないものの、おそらくは生殖年齢が関係していると考えられます。
ヘラジカの歯の加工の跡 (Photo: Riitta Rainio/Archaeological and Anthropological Sciences)
ヘラジカは当時のユーラシアの狩猟採集民にとって、イデオロギーと信念において重要な動物でしたが、彼らが住んでいた森林地帯にはあまり生息しておらず、めったに捕獲されませんでした。
ヘラジカ一頭からは、装飾に使うための切歯が8本しか取れず、場合によっては、他の部分の歯も加工されペンダントになりました。
世界最大のシカの種であるヘラジカを捕らえるのは、簡単な作業ではありません。
墓から見つかったヘラジカの歯は、石器時代の埋葬方法と、人々の死への考え方についての新たな理解につながるものです。
調査を行ったヘルシンキ大学のクリスティーナ・マンネルマー氏は、ヘラジカの歯のペンダントは、コミュニティを識別するためのものだった可能性があると指摘しています。
サーミ人を含むユーラシアの多くの先住民族にとって装飾品は、その人のアイデンティティと起源を説明する重要な役割を果たしてきました。
島の埋葬地で見つかった大量のヘラジカの歯は、加工の仕方がほぼ一致していました。
これはコミュニティ全体が、「ヘラジカの歯の集団」としてのアイデンティティを保持していたことを示唆しています。
マンネルマー氏は、「ヘラジカの歯は埋葬された人々の生活に関連しており、それらは単なる富の象徴ではなく、深淵で意味のあるものだった」と述べています。
研究結果はArchaeological and Anthropological Sciencesに掲載されました。
ヘラジカの歯はドレスやマント、頭飾りなんかにも使われてたみたいだよ
当時の若い男女も多くの装飾品で着飾ったのだろうな
Reference: University of Helsinki