英国マンチェスター大学の研究者は、1940年代に発見された死海文書の空白部分を分析した結果、そこに隠れた文字が刻まれていたと報告しています。
死海文書はヨルダンのクムラン洞窟から発見された旧約聖書の写本群で、紀元前3世紀から1世紀頃にかけて書かれたものと考えられています。
これまでに発見された1,000近くの文書は歴史的にも文化的にも貴重なものですが、裏ルートでは多くの偽物が出回っており、研究者の悩みの種になっています。
現代技術で浮かび上がった“安息日”を表す単語
マンチェスター大学に20年以上保管されてきた死海文書の断片のコレクションは、元々1950年代に、ヨルダン政府から英国リーズ大学の革と羊皮紙の専門家、ロナルド・リード氏に贈られたものでした。
彼は受け取った死海文書を物理的および化学的に分析し研究結果として発表しましたが、断片の空白部分に文字が残っていることには気づきませんでした。
その後コレクションは1997年にマンチェスター大学に引き継がれ、厳重に保管されてきました。
キングス・カレッジ・ロンドンの歴史家で考古学者のジョーン・テイラー教授を中心とした研究者チームは、長らく手付かずのまま保管され続けてきた死海文書を、現代の技術を使って再分析しました。
テイラー教授は以前、拡大鏡を使って断片を見ていた際に、かすれたヘブライ語の文字を発見しています。
この死海文書は皮革の研究のために十分な分析が行われていたものであり、今になって未発見の文字が確認されるのは思いもよらないことでした。
研究チームは、目では確認できない他の部分にも文字が隠されている可能性を考え、コレクションの中から51個の断片を選び、その表と裏の両面をマルチスペクトルイメージングを使って撮影しました。
その結果、4つの断片から炭素ベースのインクで書かれたと考えられる、ヘブライ語およびアラム語のテキストが発見されました。
マルチスペクトルイメージングで浮かび上がった文字 (University of Manchester)
このなかの1つは15~16文字の4行の文で構成されていて、内容の全てはわからないものの、「Shabbat (安息日)」の文字だけははっきりと確認することができました。
研究者はこの部分が、旧約聖書のエゼキエル書46章1-3節と関連があるのではないかと推測しています。
テイラー教授は隠されていた文字について、「ソファーの下で見つかった、ジグソーパズルの欠けたピースのようなものだ」と語っています。
分析では他の断片からも、罫線の跡や小さな文字の痕跡などを確認しています。
研究チームは現在も調査を行っており、結果は近日公開される予定となっています。
マンチェスター大学の死海文書の断片は、イギリスで唯一本物と認められてるんだって
2,000年以上前の文字が読める状態で残ってるなんてすごいねー
References: University of Manchester