100kmの白い道「サクベ」、マヤ文明の都市コバーとチチェン・イッツァの争いの証拠

歴史
(Coba/WikiMediaCC0)

メキシコのユカタン半島にある古代マヤ文明の遺跡「コバー」は、周囲の村や都市を「サクベ」と呼ばれる石灰でできた白い道で結んでいたことで知られています。

サクベは石や石灰を混ぜそれを地面に盛り立てて作られた道のことで、都市間の輸送や兵士の移動に使われていたと考えられています。

しかしコバーから伸びるサクベのなかには全長が100kmに及ぶものもあるため、考古学者は、この道がなぜそしてどんな目的で作られたのかについて決定的な答えを出せていません。

 

米国マイアミ大学の人類学の教授トレーシー・アードレン(Traci Ardren)氏たちのグループは、2014年と2017年に「LIDAR (Light Detection and Ranging-ライダー)」と呼ばれるリモートセンシング技術を使ってサクベの3Dマップを作成しています。

サクベは、当時のコバーを支配していた女王が作らせたものである可能性があります。

 

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100kmにもおよぶ白い道「サクベ」

 

Photo Credit: Traci Ardren/University of Miami

 

コバーの西には別のマヤの都市「ヤシュナ」があり、その間にある100km以上のサクベは、これまで見つかっているもののなかで最長の部類に入ります。

このサクベの調査は、1930年代にワシントンのカーネギー研究所が行っていますが、当時使われた道具は巻尺と羅針盤程度でした。

一方「LIDAR」は上空から地面に向けてレーザーを照射し、それが跳ね返ってくる時間を測定することで地形を作成でき、その精度は80年前の技術とは比べ物になりません。

この方法は現在ジャングルに覆われているサクベだけでなく、その周辺に隠れている住居や遺跡なども発見することができます。

 

アードレン氏たちの研究者チームは、2014年と2017年にかけてコバーとヤシュナをつなぐサクベを「LIDAR」を使って調査しています。

これまでサクベは直線であると考えられてきましたが、3Dマッピングは、道が途中で他の集落に向かって曲がっていることを明らかにしました。

サクベが集落へと続いている理由には、当時コバーを支配していた好戦的な女王カウィール・アジョー(K’awiil Ajaw)の存在が大きく関係しています。

 

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コバーのサクベはチチェン・イッツァに対抗するために作られた

 

多くの石碑で好戦的に描かれているアジョーは、西暦640年に王位について以降、周辺の都市を侵略し勢力を拡大してきました。

西暦680年頃に作られたヤシュナへと続くサクベが途中の集落にも続いていたという事実は、この時期のコバーが周辺一帯を治める中心地だったことを示しています。

 

考古学者は、コバーから伸びているサクベの多さと柔軟性は、同時期に新しく興った東の都市「チチェン・イッツァ」と無関係ではないと指摘します。

歴史的事実は、コバーがアジョーの死後に急速に衰退し、代わりにチチェン・イッツァが台頭したことを伝えています。

これはアジョーの存在が、チチェン・イッツァの勢力拡大を阻んでいた大きな要素だったことを意味します。

好戦的な女王であったアジョーは、チチェン・イッツァを征服、もしくは侵略から守るためにサクベを作った可能性があります。

 

コバーとつながっていたヤシュナは、チチェン・イッツァが「カスティーヨ」と呼ばれる有名なピラミッドを作るよりも前に、その3倍以上の大きさのピラミッドを建設しています。

これを可能にしたのは、人や物資を運ぶ輸送路として使われたサクベのおかげです。

アードレン氏は、コバーから伸びるサクベは、急速に発展を遂げるチチェン・イッツァに対抗するためにアジョーが作らせた可能性があると述べています。

 

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サクベの建設にどれくらいの時間がかかったのかや、どの程度の人員が関わったのかなどについてはよくわかっていません。

いずれにしてもこの白い道は、マヤのジャングルで見つかるピラミッドと同じくらい素晴らしい構築物です。

サクベは起伏の多い地形の上に作られているにもかかわらず平らであり、またその白く明るい表面は夜であっても見間違うことはありません。

アードレン氏は「サクベはトウモロコシ畑と果樹園の中を通る白い灯台だった」と述べています。

 

研究結果はJournal of Archaeological Scienceに掲載されました。

 

 

 


 

 

しぐれ
しぐれ

サクベは雨が降ったときでも道として使えるように盛り上がった形をしていたんだって

ふうか
ふうか

100kmもの道を石灰を使って作るとなるとかなりの労働力が必要だったに違いない

 

References: EurekAlert