早起きが身体に良くて夜更かしはダメだという意見は数多く存在します。
早起きすることでこんなにいいことがあった!そんな誰かの体験を聞くと夜型の人などは心動かされてしまうものです。
しかしこれには科学的な根拠があるのでしょうか。
それとも単なる感じ方の問題なのでしょうか。
BBCは複数の人を対象にした研究結果や睡眠の専門家たちの意見から、早起きが全ての人にとって有益かどうかを検証しています。
早起き信仰――早起きへの過度の期待
そもそも早起きについて考える人は少なくとも現在自分が早く起きているとは思っていない人です。
そして彼らは早起きに対して強迫観念のようなものさえ持っていることがあります。
なぜそう感じるのかについてはいろいろな理由がありますが、それはほとんどの場合他人の発言が影響しています。
職場の上司や社長といった、目上でバリバリと仕事をこなす人が自分は早起きを実践していると言ったならばどうでしょうか。
それとも芸能人やアーティストの場合はどうでしょう。
例えばApple社のCEO、Tim Cook氏はメールチェックをするために朝の3時45分に起きています。
女性司会者で有名なOprah Winfreyさんは毎朝6時2分に起き、瞑想や運動に勤しんでいるといいます。
そして俳優のMark Wahlberg氏はなんと2時30分に起床し、体力トレーニングや祈りの時間、さらにはアスリートが使用するクライオチャンバーで身体のケアをしています。
実績や発言力を持つこれらの有名人が成功の秘訣として早起きを挙げたならば、誰しも真似したくなるのは当然のことです。
実際に早起きと社会的な成功の間には密接な関係があるとする研究結果もあります。
そこでは早起きが伝統的な会社のスケジュールや社会のサイクルと同期していることを指摘し、それが学校での好成績や仕事における高賃金につながるとしています。
では誰もが早起きをすればそれでいいのでしょうか。
研究によると朝早く起きるかどうかや仕事の生産性はその人の遺伝子が関係している可能性があります。
Nature Communications誌に発表された最近の研究では、人はそれぞれ、能力がピークになる時間帯が異なっているという結果が出ています。
70万人以上のデータを調べたこの研究は、朝または夕方のどちらがエネルギッシュでいられるかについて調査したものです。
それによると人によって時間帯での感じ方が違うのは遺伝的な要因が関係していることがわかりました。
朝型でない人が無理に早起きしようとすると問題が起きる可能性があります。
(これにはその人の社会的な立場という観点が抜けています。例えば幼い子供をもつ母親は自分が何型であるかに関わらず朝早く起きる必要があるでしょう)
少なくとも研究が示すことは――朝早く起きることが健康や成功につながる唯一の道ではないということ、そして人によっては早起きすることが逆効果になるかもしれないということです。
あなたのタイプを判断する
有名な会社のCEOや芸能人が朝5時に起床しているからといってそれを真似しなければならない理由はありません。
もしあなたが朝早く起きるタイプの遺伝子を持っていないのならば、無理にそれを実行することは本来の睡眠を犠牲にしていることなります。
睡眠時間を犠牲にすると集中力の欠如、潜在的な体重増加、不安、心臓病の危険性や高血圧など様々な悪影響を身体に及ぼします。
最近アメリカではCEOが早起きであることを自慢するという傾向に対して注意を促すような考え方で出てきています。
ニューヨークタイムズ紙は、早起きと長時間労働を誇示するような仕事中毒者に対して「パフォーマンス的な仕事中毒者」という不名誉な称号を与えました。
イギリスのベッドフォードシャー大学の心理学教授Gail Kinman氏は、CEOはその会社のスタッフにとって重要なロールモデル(行動や考え方の模範となるような人物)であると言います。
だからこそ早起きであることをことさらに強調しそれを望ましいものとみなすのは無責任です。
Kinman氏は、あなたが早く仕事を始めたのならば早く帰るべきであると付け加えています。
睡眠の専門家は有名人やインフルエンサーの言葉に耳を傾けるのをやめるよう忠告しています。
では具体的にどうすればいいのでしょうか。
休日にメモを取るようにして下さい。
最も疲れているときと最も目覚めているときについて記録します。
自然に眠りについた時間や起きた時間に注意を払うようにして下さい。
そして出来上がった自分だけのスケジュールを普段の生活に同期させるようにしましょう。
そうすることであなたの中の自然のエネルギーが十分な恩恵をもたらすようになるはずです。
Kinman氏は生産性の向上という幻想を追いかけるのをやめ自分自身の睡眠リズムを理解することを勧めています。
そしてあなたが朝型のタイプでないならば、有名人の真似をして早起きに挑戦したりすることのないようにと付け加えました。
早起きは夜更かしとの対比で語られることが多く、早起きしたほうがいいに決まっているという論調が当たり前のようにまかり通っています。
大事なことは自分の身体が早起きに向いているのかを知ることです。
その点で、休日の過ごし方をメモしそこから自分の適性を判断するというやり方は簡単かつ効果的なものだと思います。
朝早く起きたいけどどうしたらいいの?と迷っている方は一度自分のライフスタイルを見つめ直してみるのもいいかもしれません。
References:BBC