PSとXboxの次世代機に向けた噂が活発になっているこの頃ですが、いまだ両社とも明確な情報を発していません。
2020年中の発売というのが現在の大方の予想ですが、メーカーの最近の動向から発売日や総合的な機能について予測する人たちもいます。
ソニーとマイクロソフトはゲーム業界トップの座をかけて熾烈な争いを繰り広げてきました。
その歴史を振り返ることで次世代機を取り巻く状況のヒントを得ることができます。
両社の辿った歴史からPS5が陥るかもしれない危険についてお伝えします。
ゲームハード戦争のシーソーゲーム
©2019 Sony Interactive Entertainment Inc.
いまや家庭用ゲーム機の世界はソニー、マイクロソフト、そして任天堂の3社が支配しています。
中でもソニーとマイクロソフトは20年近く競争をリードしてきました。
最初のXboxは2001年に発売され一時的な関心を集めましたが、その時点での市場は2000年に発売されたPS2が牛耳っていました。
ソニーはPS1とPS2で家庭用ゲーム機の主役の座を欲しいままにしている状況でした。
しかしこの幸福な時間は永遠には続かず、2006年発売のPS3はXboxの2つめのハードXbox360に大きく水を開けられる形となってしまいました。(現在までのハード売り上げ数はほぼ同じというデータがあります)
原因にはいくつかの要因が挙げられますが、独特のアーキテクチャの採用やメモリの不足、そして1年後の発売にも関わらずXbox360よりも高価だったことなどがあります。
事実メモリ不足が引き起こすパフォーマンスの差は顕著で、当時の各陣営のゲーマーたちが頻繁に衝突を起こしていたのは記憶に新しいところです。
しかし時代は繰り返すものです。
Xbox360で初めて家庭用ゲームのトップの椅子に座ったマイクロソフトは次のハードで失敗を演じることになります。
それはまるで7年前のPS3の再現のようでした。
今世代の覇者PS4とユーザーを無視したXboxOne
© Microsoft 2019
Xbox360で勢いに乗ったマイクロソフトの次世代機が登場するとあって、2013年のE3は大変な期待と盛り上がりで埋め尽くされていました。
しかし当時のXbox部門のトップ、ドン・マトリック氏が満を持して新しいハードを紹介した途端、その熱気は急速に冷め、まるで悪夢を見ているかのような雰囲気に変わりました。
XboxOneはもっとも大事な顧客であるゲーマーを無視したハードでした。
初期のXboxOneは、キネクトと呼ばれる外部入力装置(前世代で別売り発売されていたものをパワーアップしたもの)を標準装備し、強制的なデジタル管理を導入したことで大きな反発を受けました。
そして皮肉だったのがそれらの機能のおかげでライバルのPS4よりも100ドル値段が高くなったことです――それはまるで2007年発売のPS3を見ているかのようでした。
ライバルであるPS4がXboxOneのやり方を皮肉った動画は喝采を浴び、生粋のマイクロソフトユーザーの多くがXboxOneを見限る結果となりました。
マイクロソフトの敗因は結局のところ1つしかありません――それはゲーマーを大事にしなかったことでした。
クロスプレイにおけるソニーの頑なな姿勢
© 2019, Epic Games, Inc.
Epic Gamesのフォートナイトは世界中でプレイされている大人気ゲームです。
このゲームがヒットした背景の一つに、どのプラットフォームでもプレイできるという点があります。
家庭用ゲーム機はもちろんのこと、PCやモバイル、Switchでもプレイできそれらの間を遮る障害もありません。
フォートナイトの成功はいわゆる「クロスプレイ」と呼ばれる異なるハード間でのプレイを容認する動きを加速させました。
唯一この動きに難色を示したのがソニー陣営でした。
最初彼らはPS4でフォートナイトのクロスプレイを認めない方針でした。
しかし度重なる批判の声を受け渋々重い腰を上げることになります。
それだけならばまだよかったのですが、この後もう一つの問題が起こります。
それはPS4でフォートナイトをプレイしたユーザーはEpicのアカウントが使えなくなり、データを他のハードに持ち越せなくなってしまうというものでした。
これがサーバーの問題なのかソニーの方針なのかは分かりませんが、これまでクロスプレイに否定的だったソニーの印象をさらに悪くさせたことだけは確かです。(現在この問題は解決されています)
このような対応はかつてXboxOneがE3で発表されたときの空気感になんとなく似ています。
それは一言でいうならば、一人勝ち状態だからこそ垣間見えたソニーの”傲慢さ“でした。
ソニーの新しいCEOは財務畑出身
2018年4月、ソニーの新しいCEO(最高経営責任者)が誕生しました。
平井一夫氏からバトンを引きついだのは、これまでソニーの出向先で長らく財務や企業立ち上げに尽力してきた吉田憲一郎氏でした。
これまでのCEOはゲームや音楽、家電などのエレクトロニクスと接点のある人材ばかりでしたが、吉田氏はまったく毛色の違う出身となります。
様々な事業を扱うソニーが広い視野を持ったトップを据えたいという意向があるのだと思います。
この吉田氏の起用がゲーム事業にとってどのような影響があるのかはまだ未知数です。
しかし気になるのは、今月吉田氏がニューヨークタイムズに語ったインタビューです。
彼はそこで、現在多くの顧客を抱えるPSN(プレイステーションネットワーク)とプレイステーション事業を、音楽と映画事業に統合する計画を発表しています。
吉田氏は8000万人以上のアクティブユーザーを抱えるPSNを、ソニーの映画や音楽を届ける媒体として有効利用したいと考えています。
そしてこれまで別々の事業として管理されていた映画、音楽、ゲームを一つにする時期が来ているとも語りました。(これは過去のPSNの管理者たちが躊躇してきた方針です)
吉田氏は今後数年間でこれらのグループがより密接に協力するようになるだろうと付け加えています。
この方針がプレイステーションにとってどういう意味を持つのかは今後の展開次第でしょう。
しかし忘れてはならないのはプレイステーションはゲーム機であるということです。
かつてマイクロソフトはXboxOneにゲーム以外の要素を持ち込み敗者となりました。
特にXboxをテレビや映画を見るためのSTB(セットトップボックス)にしようとした試みは完全に失敗しました。
ソニーはゲーム以外の魅力的なコンテンツを持っていますが、それでもゲーム機にはゲーム機の仕事があるはずです。
もしソニーがかつてのマイクロソフトのような勝者の傲慢さを示すようなことになれば、次世代のハード競争はまさにシーソーゲームのように逆転することも考えられます。
2013年とは時代も変わり娯楽を取り巻く状況も大きく変化しました。
それでもゲーム機にとって一番大事なのはゲームソフトとそれで遊ぶゲーマーです。
この事実はどれだけ時がたっても変わることはありません。
ソニーは今年のE3に参加しないことが明らかになっています。
一方のマイクロソフトはE3でユーザーに会えることを楽しみにしていると語りました。
これまで死闘を繰り広げてきたゲーム界の両雄が新しいハードへ向けてどのような動きを見せていくのかに今後も目が離せません。
References:businessinsider