民間の海洋調査会社Caladan Oceanicは、第二次世界大戦中にフィリピン海に沈んだアメリカの駆逐艦を発見し、その姿を初めてカメラに収めています。
フィリピン海のサマール島沖、水深6456メートル地点で発見されたのは、アメリカ海軍のフレッチャー級駆逐艦「USSジョンストン」です。
USSジョンストンは、1944年に日本軍と連合国軍との間で起きたレイテ沖海戦で活躍しながらも、戦艦大和など、多数の日本の船の攻撃を受け沈没しました。
船が横たわる場所は過去の沈没船のなかで最も深く、探索は難航しましたが、特殊な潜水艇を使うことで到達に成功しました。
調査チームを率いたCaladan Oceanicの創設者で海洋探検家のビクター・ベスコボ氏は、今回の結果により、「史上最も深い場所にある沈没船にたどり着いた人物」になりました。
Just completed the deepest wreck dive in history, to find the main wreckage of the destroyer USS Johnston. We located the front 2/3 of the ship, upright and intact, at a depth of 6456 meters. Three of us across two dives surveyed the vessel and gave respects to her brave crew. pic.twitter.com/N1AuzHIi0b
— Victor Vescovo (@VictorVescovo) April 1, 2021
全長115メートルのUSSジョンストンは過去に一度発見されていますが、その時の調査では船体の一部しか確認できず、残りの部分はさらに深い場所にあることがわかりました。
そのため今回の調査では、従来のROV(遠隔操作型無人探査機)ではなく、人間が乗り込める特殊な潜水艇「DSV Limiting Factor」が配備され、ベスコボ氏と二人のエンジニアが交代しながら、船の詳細を記録していきました。
厚さ9センチの耐圧殻を持つDSV Limiting Factorは、過去にマリアナ海溝やタイタニックの調査を行っています。
USSジョンストンは、沈没から70年以上も海の深い場所にあったにもかかわらず、比較的きれいな状態を保っています。
(Photo Credit: Caladan Oceanic)
(Photo Credit: Caladan Oceanic)
(Photo Credit: Caladan Oceanic)
船体番号の「557」は今でもはっきり読み取ることができ、2つの砲塔は無傷のままで残っていました。
砲塔は本来あるべき方向を向いており、船の真ん中にある魚雷を保管していたラックは全て空の状態でした。
この状況からUSSジョンストンは、おそらく沈没の寸前まで、敵に果敢に立ち向かっていたと推測されます。
USSジョンストンの乗組員327人のうち、戦闘を生き延びたのは141人だけでした。
アメリカ海軍の元指揮官でもあったベスコボ氏は今回の調査について、「ある意味で私たちは元の場所に戻ってきたと言えます。ジョンストンと私たちの船は同じ造船所で建造され、どちらも海軍に属していました。ジョンストンとその乗組員、そしてそこで倒れた人々の家族を手助けできたことは誇りです」と述べています。
Caladan Oceanicは現在、第二次世界大戦で沈没した他の船を探すため、アメリカ海軍と協力しています。
探索は8時間を2日、計16時間行われたんだって
そっくり残っている砲塔が物悲しい……