スウェーデンにあるヴァイキング時代の墓地から羽毛を詰めた寝具が見つかり、考古学者を驚かせています。
羽毛のベッドは7世紀から8世紀にさかのぼるもので、スウェーデン中部の都市ウプサラ近くにあるヴォルスヤーデ墓地で発見されました。
ヴァイキングの墓は「船葬墓 (せんそうぼ)」と呼ばれ、副葬品を入れた船と共に死者を埋葬する形をとりますが、羽毛が含まれるケースはほとんど知られていません。
数種類の鳥の羽を使って作られたベッドは、ヴァイキングに対する従来の理解に新たな視点を加えるものです。
羽毛のベッドで埋葬された7世紀のヴァイキング
ヴォルスヤーデ墓地は1928年に発見されて以降、ウプサラ大学などによる発掘が進められ、これまでに紀元前3世紀から紀元12世紀までの広い時代にわたる複数の墓が確認されています。
ノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究者は、これらの墓のうち、7世紀から8世紀のものと推定される二つのヴァイキングの墓を分析しました。
墓には武器、防具、狩猟道具、調理器具の他に、馬などの複数の動物の骨があり、死者はそれらに囲まれながら羽毛のベッドに横たわっていました。
死者を羽毛のベッドで埋葬する文化は、イギリスのサットン・フーなどで確認されていますが、7世紀頃のスカンジナビアではほとんど例がなく、おそらくはヴォルスヤーデが最古です。
NTNUの考古学者であるビルギッタ・ベルグルンド氏は、「ギリシャやローマの富裕層は数百年前から羽毛のベッドを使用していましたが、ヨーロッパの富裕層に広がったのは中世になってからです」と述べています。
この時代では非常に珍しい羽毛のベッドは、埋葬されていた人物が、ヴァイキング社会において極めて高い地位にいたことを示唆するものです。
ヴォルスヤーデ墓地の外観。分析対象となったのは左下の7と8の墓。右下は副葬品の兜に描かれていた戦士の絵 (Credit: NTNU University Museum)
研究では、二つの墓地からベッドの一部を切り取り、それぞれを顕微鏡分析にかけました。
羽毛の種類は複数で、最も多かったのは、アヒルやガチョウなどのカモ科の鳥の羽でした。
この他にはカラスやスズメ、ライチョウ、ワシミミズクなどがあり、少なくとも9種の鳥の羽が確認されています。
また一部の羽には、ベッドに収めやすくするためか、意図的にカットされた跡がありました。
なぜベッドに多くの種類の羽が使われたのかはよくわかっていませんが、研究者は、ヴァイキングやスカンジナビア人の死生観に関係があると考えています。
ベルグルンド氏は、「人々はニワトリやフクロウ、その他の猛禽類、ハトやカラスなどの羽を使用した場合には死が長引くと信じており、一部のスカンジナビアの地域では、ガチョウの羽が魂の解放に最適であると考えられていた」と説明し、「北欧の民間伝承では、死者に持たせる羽の種類に重要な意味があった」と述べています。
墓からは、頭が切断された鳥の遺骸や折り曲げられた剣などが見つかっています。
これは、死者がこちらの世界に戻ってこないようにするための儀式であると推測されています。
ベルグルンド氏は、ベッドの羽毛にも、これらの副葬品と同じような意味合いがあるのではないかと指摘しています。
研究結果はJournal of Archaeological Science: Reportsに掲載されました。
ヴァイキングの人たちは鳥の羽で死者を来世に送ろうとしたのかもしれないね
船の形をした墓に羽毛のベッドなら、さぞかし快適な旅になったはず……
References: CNN,EurekAlert