英国ダラム大学と、クラウドファンディングによる発掘調査を行う組織DigVenturesは、イギリス北東部にある小島リンディスファーンで、ヴァイキング時代に遊ばれたボードゲームの駒の一つを発見しています。
およそ1,200年前の白と青に加工された小さなガラス片は、ヴァイキングがプレイしていたチェスのようなゲーム「ネファタフル(hnefatafl)」の駒の一つであると推定されています。
イングランドに伝わっていたヴァイキングのボードゲーム
リンディスファーンはイングランド北部のキリスト教化が行われた最初の土地であり、635年に修道院が建設されて以降、修道士たちが厳格な生活と厳しい修行を行う、キリスト教を広めるための拠点となりました。
その後リンディスファーンはヴァイキングの襲撃によって荒廃し、修道士たちは別の土地に逃げることを余儀なくされました。
発見された駒の年代は8世紀もしくは9世紀頃で、この時代はヴァイキングがイングランドに侵攻し始めた時期と重なっています。
しかし考古学者は、この駒がヴァイキングによって持ち込まれたものではなく、既にこの土地に伝わっていたネファタフルやそれに似たゲーム(タフル-Tafl)の、ローカルバージョンの駒ではないかと推測しています。
DigVenturesのマネージングディレクター、リサ・ウェストコット・ウィルキンス(Lisa Westcott Wilkins)氏は、多くの人がこの駒をリンディスファーンを襲撃中のヴァイキングが落としたものだと考えるだろうと指摘しながらも、「実際にはこのゲームは、ヴァイキングの襲撃前から北ブリテンのエリートたちにプレイされていた」と話しています。
この駒がネファタフルのローカルバージョンで使われていたものであるならば、この時代の北イングランド地方には、ヴァイキングを含む北欧の文化が既に入ってきていたことになります。
これはキリスト教を広めるという使命を持ったリンディスファーンが、現代人が考えるような厳格な場所ではなく、様々な地域の人たちが行き交う賑やかな場所であった可能性を示唆するものです。
また駒の鮮やかな装飾は、これをプレイしていた人が当時のエリート層であったことを想像させます。
発掘プロジェクトの主任考古学者であるダラム大学のデイビッド・ペッツ(David Petts)氏は、「この発見はヴァイキングの襲撃以前に、既にリンディスファーンが北欧文化の影響を受けていたことを示すものだ」と述べ、駒の品質の高さから、ゲームが裕福な僧侶や巡礼者のようなエリートによって遊ばれていた可能性を指摘しています。
発掘調査では駒のほかにも、銅製の指輪やピン、青銅製のバックル、埋葬された人を記念した彫刻のセットなどが発見されています。
Credit: DigVentures and Durham University
リンディスファーンの発掘プロジェクトは全てクラウドファンディングによって行われ、資金を提供した人は発掘作業に参加したり見学したりすることができます。
今回ガラスの駒を発見したのは、プロジェクトメンバーの母親でした。
ウィルキンス氏は、リンディスファーンの重要な発見のいくつかは一般の人々によって行われたと説明したうえで、「通常それらの人々は実際の考古学に携わることはできないが、適切に監督されている場合は可能である」と話しています。

発掘資金は全部クラウドファンディングで集められたんだって

一般の考古学愛好家はこれからの発掘調査に欠かせない存在になるかもしれないな
References: The Guardian,DigVentures