世界中どこにいても同じ品質のハンバーガーを食べることができる――ファーストフードチェーンの雄として、そして多くの人々の胃と舌を満足させる身近なハンバーガーショップとしてその名を馳せるマクドナルドは、ローマの古代浴場への出店を断念することになりました。
(2013年のデータでは)世界中で年間15億食のハンバーガーを販売し、35000以上の店舗を持つマクドナルドも、古代ローマの歴史の前では一歩引かざるを得ないようです。
ファーストフード店の進出に反対の意を示す文化省
イタリアの文化省は、ローマに存在する古代の浴場跡「カラカラ」の近くに出店を希望していたマクドナルドの申請を却下したことを発表しました。
文化大臣であるAlberto Bonisoli氏は自身のFacebookで「文化省はマクドナルドの出店の認可を取り消した」と書き、カラカラ地区でのファーストフード出店に対して反対の意を表しました。
同じくローマ市長であるVirginia Raggi氏もTwitterで「カラカラ浴場のある考古学地区でのファーストフード店の建設を中止するために文化大臣と協力している」と述べ、「ローマの驚嘆すべき遺跡は守らなければならない」とマクドナルドの出店計画の中止に賛同しています。
3世紀に作られたカラカラ浴場は、コロセウムのある市内中心部に、他の有名な観光スポットと共に存在しています。
カラカラはその名が示すように、ローマ帝国第22代皇帝であるカラカラ(ルキウス・セプティミウス・バッシアヌス)が建てた浴場で、長さ225m、幅185m、高さが38mの巨大なスペースにいくつもの浴槽が設置された当時の一大レジャー施設でした。
浴場のデザインは現代の建築家に多大なインスピレーションを与えており、世界各地に影響された建物が数多くあります。
カラカラ浴場は、今ではローマ観光の主要な名所の一つとして人々に親しまれています。
マクドナルドとしては人が集まる場所ならばどこにでも出店したいという思惑があるのでしょうが、ローマに観光にやってくる旅行者にとって今回の決定は、実のところそれほど深刻なものではありません。
ローマ市内には現時点で40近いマクドナルドの店舗が店を構えており(イタリア全土では578店舗)、旅行者がなじみの味を楽しみたいと思えば、それほど苦労することなく望みを叶えることができます。
ローマ市は近年増え続けている観光客に対して、その行動を改善し、古代遺跡や文化にもっと敬意を持ってもらうよう様々な法律を導入しています。
例えば、許可なく古代ローマの指揮官であるケントゥリオの格好をして観光客を案内した場合、450ユーロの罰金が科せられます。
またバーが午前2時から7時までの間にアルコールを提供するのは違法となり、午後10時以降に路上でアルコール飲料の容器を開けていた人も罰せられる可能性があります。
これらの一見強引ともいえる法律は、観光客とその消費が市の大きな収入になっている一方で、彼らのモラルの低下やそれによる遺跡の損傷などにローマ市が頭を悩ませている結果と言えます。
いずれにしても今回の決定によって、カラカラ浴場がビッグマックの食べかすで覆われることはなくなりました。
古代遺跡とそこに訪れる現代人、そして新しい食文化……ローマ市の決定がこれらをうまくまとめるモデルケースになるといいですね。
References:CNN