環境に長く影響を与えるプラスチックを再利用することは、持続可能な社会を作っていくうえで欠かせません。
しかしプラスチックのなかでもポリウレタンを使った製品は、その耐熱性と硬い性質から再利用が難しく、埋め立て処分されているのが現状です。
ポリウレタンはスポンジ、スポーツシューズ、合成皮革、断熱材、自動車部品などに広く利用され、2015年の生産量はヨーロッパだけでも350万トンに及んでいます。
土壌のポリウレタンからは、時間の経過とともに有害な化学物質が排出されます。
プラスチック製品は1950年代以降約80億トンが生産され、再利用される一部を除いては、埋め立てられるか海に捨てられるなどして環境を汚染し続けています。
ポリウレタンを食べて成長するバクテリア「TDA1」
ドイツのライプツィヒにあるヘルムホルツ環境研究センター(Helmholtz Centre for Environmental Research)は、プラスチックを完全に生分解できる微生物を発見するためのEUの科学プログラムに参加し、一連の研究のなかで、ポリウレタンを分解できる新しいバクテリアを特定したと報告しています。
バクテリアは高温や酸性環境などの過酷な条件に耐える能力があることで知られる「シュードモナス属 (Pseudomonas)」の新株で、プラスチックの廃棄物処理場の土壌から発見されました。
この「TDA1」と呼ばれるバクテリアに対しては、ポリウレタンを構成する主要な化学物質との反応を確かめる実験が行われ、その結果、ポリウレタンがTDA1の唯一のエネルギー源になっていることがわかりました。
過去の研究では一部の菌類にポリウレタンを分解する能力があることが示されていますが、これがバクテリアで確認されるのは初めてのことです。
微生物によるプラスチックの分解は、新たなリサイクル方法につながります。
実験ではポリウレタンの有害な化合物のうち、フェノールやカテコール、キシレンといったものがTDA1の栄養源になっている一方、トルエンやベンゼン、アニリンなどの化合物は成長に寄与していないことが明らかになっています。
これはポリウレタンの分解にTDA1を使ったとしても、土壌に有害な物質が残ってしまう可能性があることを意味しています。
研究著者の一人であるヘルムホルツ環境研究センターのHermann Heipieper氏は、「これらの調査結果は、リサイクルが困難なポリウレタン製品の再利用につながる重要なステップだ」としながらも、TDA1が大規模に使用されるまでには10年かかる可能性があると述べ、まずはリサイクルが難しいプラスチックの使用を減らし、環境への汚染を防ぐことが重要であると指摘しています。
科学者はTDA1の分解能力がポリウレタンだけでなく、ペットボトルの原料として使われるPET(ポリエチレンテレフタレート)でも有効かどうかを確認するため、追加のテストを行っています。
またTDA1のゲノム分析から、有害な化合物の分解に役立っている遺伝子を特定したいとしています。
研究結果はFrontiers in Microbiologyに掲載されました。
プラスチックを分解できる微生物はリサイクルに欠かせない存在になるかもねー
プラスチックはおいしいのだろうか……
References: Phys.org,The Guardian