アメリカのハンバーガーチェーン大手バーガーキングは7月14日、生産過程で排出される温室効果ガスの量を抑えた新しい商品を発表しました。
一部の店舗でメニューに加わった「メタン削減ワッパー」は、牛の餌にハーブとして使われる「レモングラス」を配合することで、げっぷやおならに含まれるメタンを33%削減しています。
多くの食品メーカーは、家畜が排出するメタンの気候への影響について危惧しており、フェイクミートや植物由来の製品には近年大きな関心が集まっています。
バーガーキングは今回のワッパーの発売にあわせ、レモングラスの効果を検証してきました。
しかし一部の研究者は、温暖化を防ぐ方法としてのレモングラスの利用について、懐疑的な見方を示しています。
レモングラスのメタン削減効果は限定的なもの
米国カリフォルニア大学デービス校のエルミアス・ケブレアブ博士のチームは、バーガーキングの新商品の根拠となったメキシコ国立自治大学の研究を再現した結果、「レモングラスのメタン削減効果は決定的なものではない」と報告しています。
ケブレアブ博士は、「レモングラスにはエッセンシャルオイルとタンニンが含まれており、両方とも腸内環境を変え、メタンを生成する微生物を抑制することができる」と説明したものの、メキシコの研究者が示すような劇的な効果は実証できなかったとしています。
動物の餌が気候に与える影響については過去の研究が証明しており、メタン削減に効果的な添加物もすでにいくつか開発されています。
カリフォルニア大学デービス校の動物科学の教授であるフランク・ミトローナー氏は、「メタンの排出量が33%削減されるという研究は完了しているが、論文はまだ公開されていない」と述べ、「なぜバーガーキングがレモングラスを選んだのか、私には理解できない」と首をかしげました。
バーガーキングのマーケティング主任であるフェルナンド・マチャド氏は、「レモングラスでの飼育を拡大できれば、気候変動に影響を与えるメタンの排出量を減らすのに役立つ」と述べています。
レモングラス自体にメタン削減効果があるのは確かです。
しかし牛の餌に入れる添加物については、既に実証済みのものがあります。
例えば海藻にはメタンの生成を妨げる効果があり、「3-NOP」と呼ばれる有機化合物を使ったオランダ製の添加物は、牛からのメタンを30%抑えることができます。
(3-NOPはFDA(アメリカ食品医薬品局)が認可していないため、現在アメリカの生産者は使用することができません)
またレモングラスのメタン削減効果については、牛の一生も考慮に入れる必要があります。
調査によるとアメリカで生産される肉用牛は、その生涯の最後の4カ月間だけ餌を与えられています。
牛は飼育場にやってくるまでの10~12カ月間を牧草地で過ごしますが、その間に放出されるメタンの量は、その後の生活で放出される量よりも多くなります。
もしレモングラスに強力なメタン削減効果があったとしても、実際には、牛の一生の一時期にしか効果がありません。
ミトローナー氏は、バーガーキングは牛の前半生の飼料について考慮していないと指摘し、新しいワッパーについて「他の肉と比べメタンの量が3分の1減ったわけではない」と強調しています。
バーガーキングのイノベーションと持続可能性部門の責任者であるマット・バントン氏は、「牛肉は最重要商品の一つであり、バーガーキングは、食肉業界が気候に与える影響や責任についても理解している」と述べています。
メタン削減の効果が少ししかなくても、バーガーキングみたいな大きな会社が取り組むことが大事だね
牛肉を減らす方向にいかないところが何ともアメリカらしい……
References: The Guardian