核爆弾が爆発したらどうしますか?
1つだけ言えることは、絶対に車に乗ってはいけません。
実際に核爆弾が落ちてくることはそうそうないとは思いますが、何事も心構えはしておいて損はありません。
日本は唯一の被爆国ですが、現在の核兵器の力は当時のものとは比較にならないほど強力です。
しかし核兵器とその威力についてどれだけの人が知っていると言えるでしょうか?
万が一、億が一が実際に起こることは歴史が証明しています。
もしそれに遭遇したとき、私たちには生き延びるためにできることがあります。
核爆弾が落ちたなら絶対に車に乗ってはいけない
アメリカ合衆国エネルギー省の管轄であるローレンス・リバモア国立研究所の放射線専門家Brooke Buddemeier氏によると、もし近くで核爆弾が爆発した場合は絶対に車に乗ってはいけません。
車の金属とガラスは放射能の害から人間を守るにはあまりにも脆弱です。
Buddemeier氏は10キロトン――広島に落ちた爆弾の約3分の2――の威力を持つ核爆弾が落ちてきた場合の対処法を例にあげ、なぜ車が避難道具に適さないのかを説明しています。
爆弾が落ちると次のようなことが起こります。
光に慣れた目を開けるとそこにはオレンジ色の火の玉と黒い煙の柱が毒キノコのような形を形成しています。
そして爆風が起こす衝撃で耳が聞こえなくなります。
これは典型的な爆弾投下直後の様子ですが問題はこの後にあります。
Buddemeier氏はそれがフォールアウト――放射性降下物――であるといいます。
フォールアウトは爆発の際に原子が分裂することによってつくられる核分裂生成物、または放射性同位体の複雑な混合物です。
核分裂生成物は急速に崩壊し、目に見えない非常に高エネルギーの光であるガンマ線を放出します。
ガンマ線を短期間で大量に浴びると身体の細胞や修復機能が損なわれ急性放射線症とよばれる状態に陥り、適切な処理が行われなければ(量が多い場合は適切な処理が行われたとしても)死に至ります。
このフォールアウトは鉛や泥土といった非常に高密度で厚い材料でなければ防ぐことができません。
Buddemeier氏は爆発の際に生じる衝撃によって地上の様々な物質が巻き上げられると説明します。
そしてそれらは時速160km以上のスピードで四方に飛び散っていき、より重量の軽いガンマ線を含む物質が8km先まで到達します。
塩粒もしくは砂粒ほどのサイズの物質から放出されるガンマ線は、厚い物質でなければ透過してしまい防ぐことができません。
現代の車は非常に軽い金属とガラスでできているため、これらのフォールアウト――ガンマ線――を防ぐことができないのです。
フォールアウトから逃れるためには強固な建物の中に入る
Buddemeier氏が核爆発の際の避難方法に車を推奨しないことを伝えているのは、多くの人々が避難に対して誤解を抱いているからです。
彼は核爆発が起きた際にどのような避難方法をとるのかについてアンケート調査を行いました。
答えの多くが“車での避難”を挙げました。
この概念を持っている人がたくさんいました。そしてこれはハリウッドの概念かもしれません。
災害時に車で逃げるシーンはパニック映画でのお約束です。
Buddemeier氏はフォールアウトがとても速いスピードであり、またそれらがどこまで到達するのか私たちには予測ができないと述べ、車で避難することが現実的ではないと指摘しました。
ではもし近くで核爆弾がさく裂したならばどんな行動をとればよいのでしょうか。
あなたの生存率を高める最適な方法――それはできる限り早く「強固な構造の建物」に入ることです。
そして建物の中心に行き12~24時間そこでじっとしているのが賢明です。
(もし地下があるならばそこに行くのはもっと素晴らしいことです)
Buddemeier氏は待つ理由について、ガンマ線の放射線レベルが時間と共に低下することを挙げています。
そして待っている間にあらゆるコミュニケーションツールを使って情報収集することを勧めています。
もし核爆弾が投下されたならばラジオから緊急放送が流れてくるはずです。
(そのためにも手動式のラジオを常に身近な場所に置いておくのはよいアイデアでしょう)
しかし一つだけ聞いておかなければならないことがあります。
――もし車に乗っているときに爆弾が投下されたらどうすればいいのでしょう。
Buddemeier氏は、今いる場所がコンクリートなどで囲まれた駐車場であるならば例外的に車内にとどまり情報収集をしてもよいと語りました。
しかしいずれにしても車がフォールアウトに対する防御には向かないこと、そして車で逃げた場合多くのがれきや交通事故、渋滞などに遭遇する危険があることなどを強調しました。
Buddemeier氏は「核爆発の際に車は使わない」というガイドラインに従うことで何十万という命を救うことができると信じています。
一生でそう何度も起きない災害についてはそれに対してどんなイメージを持っているのかが行動に影響を与えます。
地震や火事については避難訓練などである程度の知識や経験がありますが、さすがに核爆弾となるとそうはいきません。
パニック映画は楽しいものですが、いざというとき自分がパニックにならないよう常に準備をしておくことが重要かもしれません。
「核爆発の際に車は使わない」――このガイドラインを適用する事態が来ないことを祈りたいものです。
References:BusinessInsider