豚の心臓を人間に?心臓病の新しい治療法について心臓移植の権威が語る

雑ネタ
Image by Andreas Lischka from Pixabay

心臓病の新しい治療方法として、近い将来、豚の心臓が人に移殖される可能性が出てきました。

今から40年前の1979年にイギリスで初めてとなる心臓移殖を成功させた医師である、テレンス・イングリッシュ卿はサンデー・テレグラフ紙に対し、適応した豚の心臓は3年以内に人に移殖される可能性があると話しました。

これは現在イングリッシュ卿の弟子である医師が豚の腎臓を人に移殖する計画を立てていることから広がった話で、イングリッシュ卿は、「豚の腎臓の異種移植の結果が人に対して満足できる場合、それは数年以内に心臓でも行われる可能性が高い」と述べ、これがもし実現するならば心臓病に対する問題を変えるものになると期待を寄せました。

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損傷した心臓を修復する遺伝物質「マイクロRNA-199」

 

豚の心臓は、解剖学的、生理学的に人間の心臓と似ているため現在でも新しい治療法を開発するためのモデルとして使用されています。

この移殖が現実になるかもしれない理由の一つに、ある遺伝物質の存在があります。

イギリスの科学者を含む国際的な研究チームは、損傷した豚の心臓に「マイクロRNA-199」と呼ばれる遺伝物質の小片を送り込むと細胞が再生することを発見しました。

Natureに掲載された調査結果によれば、心筋梗塞を起こした豚の心臓にマイクロRNA-199を送り込むと、その1か月後には“ほぼ完全な回復”が認められたということです。

 

心筋梗塞は心不全の主な理由の1つであり、仮に生存したとしても心臓には永久的な損傷が残ります。

心臓病はイギリスにおいては推定90万人が罹患しているとされ、さらに数百万人が心臓発作のもう1つの危険因子である高血圧を患っています。
(日本では、心臓病はがん、脳卒中と並ぶ三大死因の一つです)

イギリス心臓財団の心臓病学長であるアジェイ・シャー氏は、「心臓発作後の心臓の修復に役立つ治療は心臓専門医にとっての聖杯である」と述べ、今回の研究について、「これが単なる夢ではなく実際に実現可能であることを初めて説得力を持って示したものだ」と評価しました。

 

 

 


 

心臓病の患者やその家族にとっては朗報とも言える研究結果ですが、具体的な進展にはいくつかの高いハードルを越える必要があります。

中でも不安要素とされるのは、マイクロRNA-199をうまく制御することができなかった例においては、実験に使用された豚のほとんどが治療後に死亡してしまったという結果です。

マイクロRNA-199を人間に使用するためにはその安全性が確保されていなければなりません。

今後、安全性が確認された豚の心臓を人間に移殖することになるのか、それとも人間に対しマイクロRNA-199を使用するようになるのかについては、さらなる研究が必要になることでしょう。

 

日本でも心臓病は無視できない死因の一つです。

豚さんには可哀そうなことをしますが、さらなる研究が進み多くの患者が救われるようになってほしいものです。

 

 

 

References:The Guardian