インフルエンザのような症状が起きたとしても、ほとんどの人は仕事を休みません。
新しい研究によると、この傾向は勤勉な日本人に限らず世界に共通です。
複数の国の専門家で作られた研究チームは、医療従事者を含む500人以上の労働者から、インフルエンザのような症状(ILI)を自覚した場合、出勤するのかあるいは休むのかについてアンケートを実施しました。
その結果、ほとんどの労働者が症状があっても出勤すると回答しました。
こうした現象は、一般に「プレゼンティズム (Presenteeism)」と呼ばれ、職場における生産性の低下や病気の蔓延などを引き起こす要因と考えられています。
軽い症状の場合、ほとんどの人は休まずに仕事をする
オンラインを用いたアンケート調査は、2018年の10月から2019年の1月にかけて行われ、世界49ヵ国の533人から回答を得ました。
このうち249人が医者や看護師などの医療従事者でした。
ILIの項目としては、喉の痛み、頭痛、悪寒、筋肉痛、くしゃみ、鼻水、軽い咳、食欲減退などがありました。
アンケートをまとめた結果、医療従事者の99.2%、非医療従事者の96.5%が、症状が軽い場合には出勤すると回答しました。
また医療従事者の半数以上(58.5%)が、症状があっても休まずに働くことを容認すると答えました。
ほとんどの回答者は、軽い体の不調で仕事を休むのはよくないことだと考えています。
PLOS ONEに掲載された研究の著者の一人で、オーストラリア国立大学の感染症医師であるピーター・コリニョン教授は、「病気のときに仕事に行く人が多すぎる」と指摘し、「発熱、寒気、筋肉痛、頭痛などの主要なILI症状があるにもかかわらず、医療従事者と非医療従事者が引き続き働いていることに対して懸念を覚える」と話しています。
研究者は、人々がプレゼンティズムに陥る理由について、同僚や組織への義務感、そして物流や文化的要因が関係していると指摘しています。
また組織によっては欠勤に対して制約があり、簡単に休みが取れない場合もあると付け加えています。
この調査が、新型コロナウイルスが流行する前に行われたものであることには留意すべきです。
現在、世界の医療従事者は休むこともままならず懸命に仕事をしています。
彼らは自らの体調よりも患者を優先することを求められています。
コリニョン教授は、「医者や看護師は、他の人を助けるために踏ん張る必要があると感じるかもしれないが、体調が悪いのならば出勤しないのが一番だ」と述べ、今がパンデミック状態であることを考えるならばなおのこと、病気の人が働くのは許されないと強調しました。
研究チームは、医療現場での病気の蔓延を防ぐには、ワクチンの接種に加え、病気休暇のあり方について考え直す必要があると指摘しています。
休むのはよくないことみたいな風潮はあるよね
病気を広げないためにも医療従事者ほど体に気を使っていただきたい……
References: Australian National University