運動中に音楽を聴くことには利点があります。
過去の研究では、音楽が運動の疲労を軽減させたり、不快感をそらしたりすることが明らかになっています。
しかしどんな種類の音楽が、どんな種類の運動に対して最も効果的であるのかについてはよくわかっていませんでした。
イタリアの研究者が行った新しい研究は、テンポの速い音楽ほど体力を高めることができ、また疲労の感じ方を抑えられることを発見しています。
テンポの速い音楽は特に、持久力を高める運動において大きな効果を発揮します。
テンポの速い音楽はウォーキングやランニングなどの効果を高める
イタリアのヴェローナ大学の生理学者ルカ・アルディゴ(Luca Ardigò)教授たちの研究グループは、19人の活動的な女性に複数のテンポの音楽を聴きながらトレーニングをしてもらい、運動中の心拍数や運動後の疲労の感覚などを調査、測定しています。
実験に参加したのは26歳前後の活発な女性たちで、トレーニングのメニューはレッグプレスを使った高強度のものと、ウォーキングマシンを使った持久力アップのものの2つです。
聞いてもらった音楽は3つのテンポの違いがあり、それぞれ、90-110bpm、130-150-bpm、170-190bpmで、比較対象として音楽を聴かずに運動する人も加えました。
参加者はこれらの条件をランダムに割り当てられたうえで運動を開始し、研究者は運動中の参加者の心拍数の測定結果と、各人の運動への感じ方のデータを評価しました。
その結果、ハイテンポの音楽を聴きながら運動していた人たちは、最も高い心拍数を記録しながらも、他のグループと比べて運動に対する知覚レベルが低いことがわかりました。
運動に対する低い知覚レベルは疲労の感じ方に違いを生み、また心拍数の高さは体力増強と相関関係があるため、この結果は、運動することを望みながらもなかなか実行できない人にとって有益な発見といえます。
速いテンポの音楽の効果は、高強度トレーニングよりも持久力トレーニングのほうが高く、特に運動への知覚レベルの低下に関してははっきりとした違いがありました。
これはウォーキングやランニングなどの持久力を高める運動の際に音楽を聴くことが、より体力を高め、疲労を少なくすることを意味しています。
アルディゴ教授は、「運動中にハイテンポの音楽を聴くと、音楽を聴かない場合に比べ最高の心拍数と低い(運動に対する)知覚が得られる」と述べ、音楽を聴きながら運動するのは体力を高める有益な手段になると結論づけています。
もっとも今回の研究は、対象者が19人の若い女性という限定的なものであるため、例えば男性や高齢者の場合にどのような違いがあるのかなどについては、さらなる調査、研究が必要です。
アルディゴ教授は今後、音楽のテンポだけでなく、ジャンルやメロディー、歌詞などが運動にどのような影響を及ぼすのかについて研究したいとしたうえで、今回の結果が人々の運動習慣の改善に役立つことを願っている、と話しています。
研究結果はFrontiers in Psychologyに掲載されました。
音楽を聴きながら走ると楽しいだけじゃなくて運動の効果も上がるんだねー
テンポの速い音楽は心拍数も上げるみたいだから、気をつけなきゃいけない場合もあるかも
References: EurekAlert