共食いしてでも生き延びる!世界の海に広がった侵略的外来種「ムネミオプシス・レイディ」

動物
(Smithsonian Environmental Research Center /Flickr)

カブトクラゲ目に属する有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)「ムネミオプシス・レイディ (Mnemiopsis leidyi)」は、体長が10cmほどの無色透明の海洋生物です。

動物プランクトンや小魚を主食とするムネミオプシス・レイディは、船のバラスト水に紛れ込むことで、原産地である大西洋以外の海にも侵入している外来種でもあり、国際自然保護連合(IUCN)の指定する「世界の侵略的外来種ワースト100」の一種に選定されています。

ムネミオプシス・レイディの驚異的な環境への適応力は、プランクトンを食べる他の生物に深刻な影響を与え、実際に1980年代には、黒海の漁業が大きな打撃を受けました。

この厄介な生物に対処するため、科学者は長い間、その生態を理解しようと努めてきました。

 

新しい研究は、ムネミオプシス・レイディが侵入した地域で繁栄できる理由を解明しています。

彼らは自分たちの子供を食べることで、厳しい環境を生き延びます。

 

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ムネミオプシス・レイディは子供を食べて餌の少ない冬を生き延びる

 

ムネミオプシス・レイディは古くから世界の海で確認されていましたが、原産地よりも冷たい海域でどのようにして生き延びているのかは大きな謎でした。

ムネミオプシス・レイディにはいわゆる冬眠のような、寒さや餌のない時期をやり過ごす能力はありません。

また幼体は完全な飢餓状態では3週間で死亡するため、餌の少なく冷たい海は、通常ならば彼らにとって厳しい環境であるはずです。

しかしムネミオプシス・レイディは難なく冬を越し、春になると再び大繁殖を始めます。

 

Communications Biologyに掲載された研究は、ドイツのキール・フィヨルドで行われた、ムネミオプシス・レイディの生態調査の結果をまとめています。

南デンマーク大学やドイツのマックス・プランク研究所の科学者などで構成された研究チームは、2008年の8月から10月にかけて、海域に生息するムネミオプシス・レイディの数を毎日記録していきました。

成体は2週間の間に12,000個の卵を産み、全体の個体数は9月初めにピークに達しました。

この時期はプランクトンが減り、ムネミオプシス・レイディを捕食する生物の数が増えます。

これは幼体が成体になれず、また成体が捕食される可能性が高まることを意味します。

しかし実際には、ムネミオプシス・レイディは死滅せず、ユーラシア北部海域の寒い冬を生き延びました。

観察データからは、捕食者の数が増えても、ムネミオプシス・レイディの成体と幼体の数は減っていないことが確認されています。

 

(Bruno C. Vellutini/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons)

 

彼らはどうやって冷たく餌の少ない時期を生き延びたのでしょうか。

その答えは共食いにありました。

 

ムネミオプシス・レイディは厳しい環境を生き延びるため、自分たちの子供を食べていました。

捕獲した成体の胃の中からは、幼体が発見されています。

多産なムネミオプシス・レイディは、たくさんの卵を産むことで自分たちの食料を確保しました。

 

研究者は目を疑うような共食いの実態を改めて確認するため、実験室に成体と幼体を持ち帰り、水槽を使って北の海の厳しい環境を再現しました。

その結果、やはり成体は餌がなくなると幼体を食べて生き延びていることがわかりました。

得られる栄養分はプランクトンや小魚より少ないものの、子供を食べた成体は食べない成体よりも2~3週間長く生きました。

ムネミオプシス・レイディの共食い戦略は、厳しい冬の海を乗り越えることを可能にしています。

 

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マックス・プランク研究所の生態学者であるトーマス・ラーセン博士は、ムネミオプシス・レイディが漁業に与える大きな影響について触れたうえで、「ムネミオプシス・レイディのライフサイクルと戦略の理解は、より効率的な対処法の考案につながる」と話しています。

研究者は、ムネミオプシス・レイディが共食いによって環境に適応しているという事実は、他の侵略的外来種の理解に新しい見方を付け加えると結論づけています。

 


 

 

ふうか
ふうか

自分の子供を食べてでも生き残ろうとするとは、なんという生への執念

かなで
かなで

生き物を移動させちゃいけないことがよくわかるね

 

References:The Guardian