インドのマハーラーシュトラ州で、井戸に落ちた2頭のヒョウが救出されています。
ヒョウは縄張り争いをしている最中に井戸に落ちてしまったと考えられ、インドの野生動物保護組織Wildlife SOSや地元の住民が救助にあたりました。
井戸の深さは15メートルで、水深はヒョウの体高よりも深いため、2頭ともおぼれ死ぬ可能性がありました。
争うどころではなくなった2頭のヒョウは悲痛な叫び声を挙げ、近くの農民がそれを聞きつけたことで、救助活動が始まりました。
縄張り争いの途中で井戸に転落した2頭のヒョウ
救助は、過去に何度もヒョウを救った経験をもつ、Wildlife SOSの「MANEKDOH LEOPARD RESCUE CENTER (マニクドー・レオパード・レスキューセンター)」のチームが行いました。
チームはまず、ヒョウが入れる大きさのケージを井戸におろし、2頭を引き上げようと考えました。
1頭はすんなりケージに入りました。
しかしもう1頭は警戒心から、なかなかケージに入ろうとしませんでした。
(Credit: WildLife SOS India)
ヒョウは泳ぎが得意ではなく、また井戸には足をつけられる場所も少ないため、残る1頭を放っておくわけにはいきません。
チームは何度もケージを揺らしたり、声をかけたりしてヒョウに観念するよう働きかけました。
その甲斐あってか3時間後、ヒョウはようやく自分の身に迫っている危険を深く理解し、しぶしぶケージの中に入りました。
2頭のヒョウが引きあげられたとき、井戸の周囲にはたくさんの野次馬が見物にやってきていました。
(Credit: WildLife SOS India)
ヒョウは溺れる危険から逃れられたものの、すぐに開放というわけにはいきませんでした。
レスキューセンターは健康診断を行うためヒョウを施設に連れ帰り、様々な検査を行いました。
センターの獣医師であるAjay Deshmukh博士がヒョウを診察したところ、体の一部に外傷があるものの、内臓など他の部位には問題がないことが確認されました。
ヒョウはぐったりとしていましたが、それは救助に伴う大きなストレスが原因でした。
その後ヒョウは施設で十分な休養をとり、野生に返されています。
生息地を奪われつつある野生のヒョウ
レスキューセンターは毎月のように、井戸に落ちたヒョウを救出しています。
これはインドの井戸の多くに囲いがないためです。
野生動物が身の回りに存在しているという風景は、先進国から見ると魅力的に感じます。
しかし、井戸に囲いがないという状況は、動物だけでなく子供たちの転落といった事故も招きます。
レスキューセンターは地元の住民に対し、井戸の管理を徹底するよう啓蒙しています。
ヒョウは単独で行動する動物で、その縄張りは30~78キロ以上と広範囲に及びます。
ヒョウは他のヒョウが縄張りに侵入しないよう、あちこちに尿や糞などでマーキングをしています。
しかし近年の開発により、ヒョウが生息できる場所は少なくなってきており、縄張りが重なり合う事例が頻繁に起きるようになっています。
農村での縄張り争いと、それによる井戸への転落という一連の出来事は、人間の飽くなき富への欲求が招いた悲劇とも言えます。
ヒョウは単独で生活してるから縄張り意識が強いんだよ
15メートルの井戸に囲いがないというのもすごい……
Source: WildLife SOS