人類は世界に生息している推定550万種の昆虫についてそのほとんどを知りません。
しかし昆虫は人間の生活と密接に絡み合った存在であるため、科学者たちは、たとえそのほとんどが知られていなかったとしても、絶滅から守らなければならないと主張しています。
昆虫の減少は花粉の媒介者の減少を意味し、これは植物やその周囲の生態系だけでなく、世界の安定的な食料供給にも大きな影響を与えます。
Biological Conservationに掲載されたレポートは昆虫の保全について、知られていない昆虫のデータを待っていては、いずれ取り返しのつかない事態を招く可能性があり、今できることを即座に始めていく必要があると指摘しています。
名前も知られていない昆虫の多くが絶滅の危機に瀕している
科学者は動物保全の視点が主に哺乳類と鳥類に向けられている点を批判し、現状はもはや昆虫や無脊椎動物を無視していいレベルにはないと警告しています。
レポートは、世界の昆虫種のうち約5分の1にしか名前がつけられておらず、そのほとんどが単一の標本にのみ由来しているとしたうえで、「多くの昆虫種は記録される前から絶滅してきており、その数は産業革命以降で、全ての昆虫の5~10%、すなわち250,000から500,000種に及ぶ可能性がある」と結論づけました。
さらに、「現在の昆虫の絶滅危機は非常に心配だが、これについて私たちが知っているのは氷山の一角に過ぎない」とし、現在利用可能な方法に基づき、今すぐにでも行動を起こさなければならないと指摘しました。
レポートの著者の一人である、フィンランドのヘルシンキ自然史博物館のペドロ・カルドーゾ(Pedro Cardoso)教授は、この数は陸貝の絶滅数から推測したものであると説明し、「昆虫と陸貝とでは傾向が違うかもしれないが、陸貝は殻を証拠として残している」と述べ、この方法が絶滅した昆虫の数を見積もる最適のものであることを強調しました。
カルドーゾ教授は、「私たちは実際昆虫のことについて全てを知っているわけではないが、行動するための良い情報を待っていては、種を回復するのは手遅れになるかもしれない」と述べています。
科学者は昆虫の減少の主な原因に以下のものを挙げています。
・農薬の集中的な使用
・産業公害、および光害
・侵略的外来種
・気候危機
レポートでは昆虫を守るためにできることとして、より大きな自然公園をつくることや有害な農薬の使用禁止、芝生を刈らないことや庭に枯れ木を残すことなどの方法を紹介しています。
また昆虫を危機から救うには、象徴的な種を使いより多くのメディア報道をすることや、包括的な教育を通じて昆虫についての知識を広めていくことが不可欠であると付け加えています。
カルドーゾ教授は、多くの人たちが昆虫を嫌うことを学んでいるため、そうした考え方を変える必要もあると指摘します。
教授は「虫やクモを恐れる2、3、4歳の子供を見たことはない」と述べ、これらは文化的なものであると説明しました。
また、昆虫にやさしい庭は絶滅を食い止めることに役立ち、種にとってはこのような小さな解決策でさえ大きな助けになると話しています。
昆虫のほとんどは見た目で誤解されているといってもいいだろう
擬人化したりアイコンにしたりして身近に感じてもらうことも保全活動には必要かもしれないね
References: The Guardian