恐竜の化石から人間の稀な病気の痕跡が見つかる、6,600万年前に絶滅したハドロサウルス

自然
(hadrosaurs/Wikimedia/Public Domain)

イスラエルのテルアビブ大学の研究者は、6,600万年前に絶滅した恐竜「ハドロサウルス」が、現代の稀な病気の一つである、ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis-LCH)を患っていた可能性があると報告しています。

LCHは、免疫系に関係のあるランゲルハンス細胞が異常な増殖を起こし腫瘍化する病気で、主に2~10歳の子供の骨に症状が現れます。

腫瘍は多くの場合、放っておいても時間の経過とともに消失するものの、できる部位によっては痛みと腫れを引き起こし重篤となる場合があります。

 

ハドロサウルスの化石は、カナダのアルバータ州南部にある州立恐竜自然公園で発掘されたもので、その脊椎の骨の形状は、LCHに罹患した人間の骨と酷似していました。

LCHは人間以外の動物でも確認されていますが、恐竜の化石から病気の痕跡が発見されたのは初めてのことです。

 

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ハドロサウルスの骨に開いた穴は、人間のLCHの特徴に酷似している

 

テルアビブ大学の解剖学者ハイラ・メイ(Hila May)博士たちの研究チームは、高解像度のCTスキャンを使用してハドロサウルスの骨を分析しています。

骨にはこの恐竜が病気を患っていたことを示すいくつかの証拠がみられ、特に大きな穴の開いた2つの脊椎の骨は、研究者たちの興味をひきました。

脊椎の骨に広がった大きな空洞は、人間のLCH患者の骨にみられる特徴と非常によく似ていました。

 

骨に開いた穴は人間のLCHの症状に似ている Credit: Assaf Ehrenreich/Tel Aviv University

 

ハドロサウルスの体長は約10メートルで、その体重は数トンもありました。

恐竜は人の体とは根本的に構造が異なるため、もしハドロサウルスが現代に生きる人類と同じ病気を抱えていたのだとすれば大きな発見です。

過去の研究では、ティラノサウルス科の恐竜が痛風に苦しみ変形性関節症を患っていた証拠が発見されていますが、実際のところ化石から恐竜の病気を推測するのは、彼らが既に絶滅している以上困難な作業です。

 

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研究チームは、ハドロサウルスがLCHにかかっていたかどうかを判断するため、コンピューターに脊椎の詳細なスキャンデータを取り込み、病気の構造とそれを成長させる血の流れを3Dで再構築しました。

シミュレートされたハドロサウルスの体のミクロおよびマクロ分析は、この恐竜が確かに人間と同じ病気に苦しんでいたことを示しました。

メイ博士は、「恐竜でこの病気が同定されたのはこれが初めてである」と述べる一方、腫瘍を引き起こすLCHがガンであるかどうかについては専門家の間で意見が異なるため、ハドロサウルスの病気が現代の人間のものと同じかどうかについては断定できないとしました。

博士はコロナウイルスやHIV、結核などの病気が多くの動物に由来していると指摘したうえで、今回の研究は、病気の発生や進化について理解することや、それらを治療するための効果的な方法の発見などに役立つ可能性があると強調しています。

 

研究結果はScientific Reportsに掲載されました。

 


 

 

かなで
かなで

恐竜は絶滅したのに病気は数千万年も生き残ってるんだね

しぐれ
しぐれ

技術が進めば、化石から病気に対抗する方法が見つかるようになるかもしれないね

 

References: CNN