世界の気温は急上昇を続けており留まる気配がありません。
しかし地上での気温の上昇は年によって上下することがあるため、人々は温暖化対策の緊急性を忘れがちになっています。
一方地球の約7割の面積に広がる海では温度の変化が少ないため、その温度の変遷を調べることで、現在の気温が過去と比べてどれだけ上昇しているのかを正確に知ることができます。
米国や中国の国際的な科学者のチームは、世界の海に浮かぶ3,800個以上の観測ブイからのデータを用い、1950年から2019年までの海洋の温度を分析しています。
それによると、世界の海は毎秒ごとに、広島に投下された原子爆弾5個分以上のエネルギーを蓄えています。
世界中の人が100台のドライヤーを24時間海にあてるのと同じ熱量
科学誌「Advances in Atmospheric Sciences 」に掲載された研究は、1950年から2019年までの海洋の温度を分析しています。
その結果、2019年の海洋の平均温度が、1981年から2010年の平均温度よりも0.075度高かったことがわかりました。
0.075度というのはとても小さな温度変化に思えます。
しかしこれは、地球の7割以上の面積を占める海とその深さを考慮すると“とんでもない”上昇率です。
研究著者の一人である中国科学院のLijing Cheng氏は、その温度の変化を分かりやすくエネルギーに例えています。
広島に投下された原子爆弾は約63兆ジュールのエネルギーで爆発しました。この25年間に世界の海に放出された熱量は、広島の爆弾の36億発分に相当します。
研究に参加した米国セントトーマス大学のジョン・エイブラハム氏は、このエネルギー量について、「365日、毎秒5発の原子爆弾が海に流入していることと同じである」と述べています。
エイブラハム氏は海に蓄積される熱エネルギーについて、さらに現代的なイメージを使って表現しています。
それによると毎秒ごとに海が蓄えている熱量は、世界の全ての人が100台のドライヤーを海に向かって24時間あて続けるのと同じエネルギー量です。
エイブラハム氏はこれを「あまりにも多いエネルギーの塊だ」と説明しました。
海が高温になると氷が解け海面が上昇します。
海面の上昇はハリケーンや台風を強力にし、雨を激しいものにします。
また海水温度の上昇は海洋生物の生態を狂わせ、環境の変化に適応できなくなった生物は死に絶えます。
エイブラハム氏は、海水温度の上昇は、天気をステロイドで強化するようなものだと話します。
海水温度の上昇は私たちに本当に影響を与え、それは破壊的なものになります。しかし対策を講じるのに遅すぎることはありません。
エイブラハム氏は、地球温暖化対策が遅れれば対応がより困難になることを認めつつも、人間には、状況を今よりも悪くしないためにできることがあるはずだと強調しました。

海の温度の上昇は海面だけじゃなくて水深の深い場所にも及んでるんだって

1秒ごとに原爆5個分の熱エネルギー……それらが解放されたとき地球は一体どうなってしまうんだろう……