欧州委員会の共同研究センター(JRC)の科学者は、1984年から30年間の世界の海岸線の浸食度合いを調べ、それをIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気温上昇シナリオと掛け合わせています。
シミュレーションは、最も楽観的なシナリオにおいてでさえ、2100年までに世界の海岸線の3分の1が消失することを示しました。
砂浜には暴風雨や洪水から内陸部を守る機能があります。
研究者は、海岸線の消失は観光に打撃を与えるだけでなく、野生生物を危険にさらし、沿岸集落に大きな被害をもたらすことになると警告しています。
2100年までに世界の約半分の砂浜が海に沈む
JRCの海洋学者で、Nature Climate Changeに掲載された研究の筆頭著者であるMichalis Vousdoukas氏は、過去30年間の衛星画像データをIPCCの予測シナリオと掛け合わせ、世界の海岸線がどのように変化するのかを調査しています。
IPCCは2014年に発表した報告書のなかで、今後100年間で地球の気温がどれだけ上昇するのかについて4つのシナリオを提示しています。
シミュレーションは「RCP4.5」と呼ばれるシナリオを用いた場合、今世紀の後半までに世界の海岸線が平均で86.4m後退し、最も温度上昇が見込まれる「RCP8.5」のシナリオでは、それが128.1mになることを示しました。
(※RCPの数値は温室効果ガスの量を表しており、この数値が高いほど将来の地球の温度は高くなります)
温度上昇が大きい「RCP8.5」のシナリオでは海面の上昇幅は80cmを超え、それによって2100年までに、合計で世界の海岸線の約49.5%に相当する、131,745kmの砂浜が海の下に沈みます。
また砂浜は、2050年まででも40,000km以上が消失します。
海面上昇で最も被害を受ける国はオーストラリアで、14,849kmの海岸線を失います。
以降順に、カナダ(14,425km)、チリ(6,659km)、アメリカ(5,530km)、メキシコ(5,488km)、中国(5,440km)と続き、アフリカのガンビアとギニアビサウに至っては国内の海岸線の60%以上が失われると予測されています。
Vousdoukas氏は、護岸などの水の流れを妨害する構造物がない場合、100mを超える範囲で水没する場所もあると話し、特にカリブ海や地中海などの小さな島においては、砂浜の距離が短いためその影響はさらに大きくなると説明しています。
海面上昇は海岸を観光地としている地域にとって致命的となります。
シミュレーションでは、観光に大きく依存している発展途上国の砂浜が、海面上昇によって60%以上消失するという結果が出ています。
Vousdoukas氏は、「温室効果ガスの排出量が適度に緩和されれば、海岸線の後退を2050年には17%、2100年には40%防ぐことができる」と述べ、海面上昇の影響を抑えるために気候変動と迅速に戦う必要があることを強調しました。
今回のシミュレーション結果を楽観的だと批判する専門家もいるようだ
南極とかグリーンランドの氷も解けてるみたいだから、消失する砂浜がもっと増えることもあり得るよね
References: The Guardian