もしアメリカとロシアの核が発射されたら――まだ過ぎ去っていない“核の冬”

雑ネタ
Photo by Steve Jurvetson/Flickr

気候変動が環境に及ぼす影響について毎日のようにニュースが流れてきています。

気温の上昇は地球の未来に対して“暑い”問題提起をしますが、かつては“寒い”問題の方に多くの関心が集まっていました。

 

冷戦下の1980年代、アメリカとロシア(ソ連)が抱えている核兵器は世界に「核の冬」をもたらす脅威でした。

核の冬という概念は1983年に初めて提唱されたもので、核爆発による一時的な被害ではなく、それがもたらす細かい塵や灰、煤などが大気の循環と共に地球上にまき散らされ、それによってつくられた雲が太陽の光を遮るという理論です。

日光が遮られ、作物が死に絶え、地上は生物が生きられる環境ではなくなってしまう――核の冬の概念がもたらした負のイメージは、人々に核兵器に対する恐怖感を抱かせました。

幸いにもどちらの国も思いとどまったことにより、地球は(今のところ)核の灰に覆われずに済んでいます。

 

しかし核兵器そのものは依然として世界中に多数存在しています。

新しい研究によれば、もしアメリカとロシアが保有している核を同時に発射した場合、地球への被害は深刻で壊滅的なものとなります。

核の冬がもたらす脅威はすぐそこにあります。

 

スポンサーリンク

 

核の冬――核爆発が及ぼす地球と人類への影響

 

Photo byIvy Mike/Wikipedia

 

アメリカニュージャージー州のラトガース大学の気候学者アラン・ロボック氏は、現在核を最も保有している国であるアメリカとロシアがもしそれらを発射したならば、地球にどれほどの影響を与えるのかについて調査、研究をしています。

 

核爆発が起きるとそのすさまじいエネルギーにより、建物が崩壊し地震が起こり広範囲にわたって火災が発生します。

その後放射性物質を含んだ大気と水は気象の循環により世界中に拡散し、それによって出来た雲が太陽の光を遮り、地上は作物の育たない不毛の大地へと変貌します。

こうした核による被害のシミュレーションは、これまで多くの科学者が試みてきました。

しかし最近は冷戦が終わったこともあり、核の脅威について語られることが少なくなっています。

ロボック氏は「冷戦は終わったかもしれないが、核は依然として破壊的であり、気候に大惨事をもたらすのには十分以上のものがある」と語ります。

 

ロボック氏は環境科学者や大気科学者たちと協力して、もしアメリカとロシアが保有する全ての核を発射したならば地球がどれほどの影響を受けるのかを調べました。

このシミュレーションを実行するには大気の循環についてのモデルが必要となります。

そこでロボック氏はNASAが作成した大気海洋循環モデルを使い、放射性物質が大気に放出された場合のシミュレーションを行いました。

結果は(想像通り)恐ろしいものでした。

 

以下はアメリカとロシアが全ての核を発射した場合の地球に及ぼす影響の一部です。

 

・核爆発後2週間で核の灰が地球の上空を覆う。
・それにより急激な気温の低下が起きる。
・気温は12か月で約9度低下し、北半球の大部分は一年を通して氷点下となる。
・日照不足と気温の低下により作物の成長が遅れ、食料不足になる。
・世界のほとんどの地域が飢餓状態となる。
・降水量は最初の数か月で30%減少し、さらにその先数年で47~58%にまで減少する。
・大気の循環により海洋生物にも被害が及び、海での食料調達も困難となる。
・エルニーニョ現象が7年連続で起こる。(通常は3~7年に一度しか発生しない)
・死の灰がオゾン層に穴をあけ、地上に有害な紫外線が降り注ぐ。

 

ロボック氏は2007年にも同じようなシミュレーションを行っています。

その時もNASAの当時の気候モデルを利用しましたが、結果は今回のものとそれほど大差がありませんでした。

これは、核爆発がもたらす影響は依然として地球にとって脅威であることを意味します。

核の冬の概念は(これまで実際には核爆発が起きていないために)机上の空論であるという見方も一部にはありましたが、ロボック氏の行った2度のシミュレーションはそれが現実的な脅威であることを示しました。

 

研究に携わったラドカース大学のジョシュア・クーペ氏は、「核の冬は本当に地球に壊滅的な結果をもたらします」と述べています。

 

スポンサーリンク

 

核の冬の脅威はすぐそこにある

 

Photo byTomasz Pro/Flickr

 

もし実際に核爆発が起きたとしたら、その影響はいつまで続くのでしょう?

ロボック氏によれば、5年以内に地球の温度は上昇し始めます。(NASAの気候モデルでは7年かかるとされています)

そして地球を覆う放射性物質を含んだ雲が晴れるには、10年の歳月が必要になります。

 

金輪際、二度と核兵器が発射されないのが一番いいことですが、ロボック氏は「問題は解決していない」と語ります。

1980年代には、世界に50,000を超える核兵器が存在していました。

現在その数は減っており、8,500ほどになっています。

しかしこれは脅威がなくなった、もしくは少なくなったことを意味していません。

かつて(大量の)核兵器を保有していたのはアメリカとロシア(ソ連)の2か国でしたが、現在、核保有国は9カ国にまで及んでいます。

また国連は2017年に、核兵器禁止条約に関連する会議を招集しましたが、いまだ発効に必要な50カ国の批准を受けておらず、核兵器根絶へ向けた各国の足並みは揃わないままです。

 

核がもたらす影響は地球や人類にとって計り知れないものがあります。

世界中の国が核の備蓄を無くさない限り、核の冬が過ぎ去ることはありません。

 

 

 

 

 

 

References:LiveScience

コメント