1980年にウィスコンシン州で発見されたサソリの化石を再調査した結果、それが世界最古の陸上動物である可能性が出てきました。
化石は4億3,700万年前のものと推定され、サソリとハンターの意味を持つ「Parioscorpio venator」と名付けられました。
この時代の地球の生き物は全て水の中で生活していました。
その後進化の過程において地上に進出するものが現れるようになります。
サソリの先祖については、それが元々水生生物であるとする見方がありましたが、これまで決定的な証拠は見つかっていませんでした。
しかし研究者がParioscorpio venatorの化石を詳しく調べたところ、このサソリには地上で生きることのできる構造が備わっていることがわかりました。
海から地上に進出した最初の動物はサソリ……だったかもしれない
長さ約2.5cmのParioscorpio venatorの化石は、1980年にウィスコンシン州の採石場で発掘された複数の化石に含まれていたものの一つで、発掘後ウィスコンシン大学の博物館に長い間保管されていました。
オハイオ州オッターベイン大学の古生物学者であるアンドリュー・ウェンドラフ博士が、研究の一環としてこの化石群を再調査したところ、新しく見つかったのがParioscorpio venatorでした。
化石は保存状態が良く、体の内部に呼吸器系、循環器系、消化器系といった構造が残っているのを確認できました。
ウェンドラフ博士は「このサソリは地上で生きられることを示す呼吸構造を持っていた」と語り、Parioscorpio venatorが水中から地上に進出した最古の動物である可能性を示唆しました。
Image: Andrew Wendruff
Parioscorpio venatorには、現代の陸上動物や水生動物のような肺や鰓がありませんでしたが、陸で呼吸をするカブトガニによく似た内部構造を持っていました。
ウェンドラフ博士は、Parioscorpio venatorが陸生のサソリであるという“明確な証拠”はないが、地上で呼吸する能力はあったとし、彼らが陸上と水中の両方の環境で生活していた可能性が高いと話しています。
これまで最古の陸上動物とされていたのは、Pneumodesmus newmaniと名付けられたヤスデの仲間で、およそ4億2,000万年前に生息していたと考えられています。
もしParioscorpio venatorが地上で呼吸をしていたならば、記録を1,700万年更新することになります。
Parioscorpio venatorが海から陸に上がった最古の動物であるかどうかは議論の余地があります。
ベルリン自然史博物館のクモ類・多足類の担当学芸員であるジェイソン・ダンロップ博士は、心臓血管系のようなサソリの内部構造が化石の状態で見つかるのは珍しいと述べる一方で、明確な肺や鰓が確認されていないことから、このサソリが陸上で生活していたと断言することには慎重になるべきだという見解を示しました。
またバルセロナの進化生物学研究所の古生物学者ヘスス・フェルナンデス博士も、このサソリが本当に陸上のものであるとするならば、少なくとも同様の呼吸構造を持つクモ類は、そのころ既に陸上に定着していた可能性があるだろうと指摘しています。
研究結果はScientific Reportsに掲載されました。
このサソリの尾には現代のサソリのような針があったけど毒針だったかはわからないんだって
なぜ海での生活を捨ててまで陸に上がろうとしたのだろう……
References: The Guardian