オーストラリアの研究者は、ホホジロザメの胃の内容物から海底に生息する魚を発見しています。
ホホジロザメは映画「ジョーズ」が公開されて以降、人間やアザラシ、イルカなどに襲い掛かる恐ろしい生き物というイメージで語られてきました。
しかし多くのホホジロザメはほとんど哺乳類を口にせず、海中の広い範囲を上下に移動しながら、もっぱら魚を食べて生活しています。
ホホジロザメは食べるために海中や海底で多くの時間を過ごす
ニューサウスウェールズ州一次産業省とシドニー大学の研究者は、サメネットに引っかかり命を落としたホホジロザメを解剖し、胃の内容物を分類、記録しています。
このサメネットは、ニューサウスウェールズ州が行っているホホジロザメの保護プログラムの一つで、海水浴客やサーファーを守るためではなく、サメが縄張りを作るのを防ぐ目的で設置されたものです。
研究には、2008年から2019年までの間にネットに引っかかった計52匹のホホジロザメが使われました。
サメのほとんどは3メートル未満の若い個体でした。
(今回の研究のために殺されたホホジロザメはいません)
52匹のうち40匹の胃の中から合計121個の未消化の物体が発見され、それらは種を特定するための分析にかけられました。
ホホジロザメの胃の内容物 (Credit: University of Sydney)
分析結果は、ホホジロザメが小さな魚や海底に生息する魚を食べる一方、哺乳類をほとんど口にしていないことを示しました。
胃の中から哺乳類の一部が出てきたのは40匹中1匹だけでした。
内容物の内訳は以下の通りです。
これらに含まれないものは、正体がはっきりしない魚でした。
研究者の一人であるシドニー大学のリチャード・グレインジャー博士は、今回の分析結果について、「サメの胃の中からは、海底に生息している様々な種類の魚が見つかった」と説明し、「これはホホジロザメが大部分の時間を海底で費やしていることを示している」と述べています。
ホホジロザメは他の海域で行われたタグを使った追跡研究でも、水面近くではなく水面下で多くの時間を費やしていることが明らかになっています。
グレインジャー博士は、「ホホジロザメが海面にヒレを突き出して獲物を狩るというイメージはステレオタイプであり、あまり正確とは言えない」と話しています。
研究では、体の大きな個体ほど脂肪分の多い食事をする傾向にあることもわかりました。
これはアザラシやイルカといった海洋哺乳類に対する攻撃性につながると考えられます。
ではどれくらいの大きさのサメが、海洋哺乳類、そして人間にとって危険なのでしょう?
グレインジャー博士は、ホホジロザメの食生活が多様であることに触れたうえで、「体長が約2.2メートルに達するまでは、イルカなどの海洋哺乳類や他のサメなどを狙うようにはならない」と述べています。
研究結果はFrontiers in Marine Scienceに掲載されました。
ホホジロザメはいろんなものを食べるけど、タコとかイカはあんまり好きじゃないみたいだよ
胃の中に哺乳類が見つからないのは消化した後だからかもしれない……
References: Phys.org