米国フロリダ州の海洋生物の研究者は、最近の新型コロナウイルスによる外出規制によって、絶滅の危機に瀕しているウミガメの巣の数が増え始めていると報告しています。
フロリダ州にあるジュノビーチ(Juno Beach)は世界でも有数のウミガメの産卵地で、毎年5月末までにオサガメやアカウミガメなどが産卵に訪れます。
一方でビーチには多くの観光客もやってくるため、ウミガメは浜辺の人間やボートなどによって命を落とすことがあります。
人がいなくなるとウミガメの巣の数は増加する
ウミガメの研究や保護活動を行っている「Loggerhead Marinelife Center (LMC)」のスタッフは、約15kmの範囲にわたってジュノビーチの監視を行い、2月の終わりから4月半ばまでの間に計76個のウミガメの巣を発見しています。
この数は去年の同じ時期に比べて大幅な増加であり、研究者は、浜辺に人がいない状況がウミガメの産卵を後押ししていると推測しています。
去年ジュノビーチで確認された巣の数は約21,000でした。
オサガメの赤ちゃん (Jolene Thompson/Flickr)
現在確認されている巣のほとんどはオサガメの巣です。
オサガメは現存する種のなかで最大のカメであり、体重が900kgに達するものもいますが、混獲やプラスチックの摂取などにより生息数は激減しており、IUCN(国際自然保護連合)とフロリダ州は、本種を絶滅の危険がある種に分類しています。
今回、例年よりも多くの巣が確認されたことについて、LMCのシニアマネージャーであるサラ・ハーシュ(Sarah Hirsch)氏は、「私たちの世界は変わったが、これらのカメは何百万年も同じことをしてきており、このことは、世界がまだ続いているという希望と安心感を与えてくれる」と述べ、「この環境でウミガメの成長を見るのが楽しみだ」と付け加えました。
フロリダを拠点に活動しているウミガメの保護組織「The Sea Turtle Conservancy (STC)」のデイヴィッド・ゴドフリー(David Godfrey)氏は、現在のコロナウイルスによるロックダウンは、いくつかの点でウミガメにとって有利であると指摘します。
ゴドフリー氏は、「ウミガメが傷つく主な原因はプラスチックや海洋ごみである」と述べたうえで、浜辺の人間が減れば海洋環境に入るプラスチックも減るため、ウミガメが死ぬ可能性は低くなると強調しています。
LMCの調査によるとウミガメの赤ちゃんの生存率は約1000匹に1匹であり、ジュノビーチのような観光客が訪れる浜辺では、より死亡率が高くなることが示されています。
しかし今年は今のところ浜辺の人気が少ないため、赤ちゃんの生存率は上昇する可能性があります。
STCのゴドフリー氏は、例年であれば生まれた赤ちゃんは周囲の人工的な光に混乱し海にたどり着けないことがあるが、今年は生き延びる可能性が高くなるだろうと話しています。
ロックダウンが始まってからマナティーと船の接触事故が減ってるんだって
人間がいないほうがウミガメにとって好都合というのは、何とも悲しいものがあるな
References: The Guardian