ニューヨーク州は猫の爪を切除する「ディクロー」(Declawing)と呼ばれる手術を禁止する初めての州となりました。
ニューヨーク州の知事、アンドリュー・クオモ氏は7月22日、アメリカの多くの地域で行われている、猫の悪癖を防ぐための爪切除手術、ディクローを禁止する法案に署名しました。
ディクローは、猫の各指の第一関節もしくは全ての骨の部分を切除する手術のことで、猫が家具を傷つけたり、飼い主に怪我をさせないために行われている手術のことです。
爪を失った猫は本能的に壁や床を引っかいたり、爪を出して攻撃することがありますが、爪自体がないために家具や人は被害を免れるという寸法です。
ディクローはその非人道的な方法から動物愛護団体を始め、多くの猫愛好家から非難の的となっています。
ディクローはアメリカでは一般的に行われている手術
クオモ氏は声明でディクロー手術を、無力な動物にとって身体的及び行動的な問題を引き起こす可能性がある残酷で痛みを伴う手段であると非難し「この古風な習慣を禁止することによって、動物がもはやこれらの非人道的で不必要な手術を受けないようにする」と述べました。
このディクロー禁止法案はただちに施行される予定で、感染症や怪我などの明確な医学的理由がないかぎり、手術を行った獣医師は1000ドルの罰金を科されることになります。
マイケル・ギアナリス上院副議長は「ディクローは、人間の指の第一関節を切断するのと同じような残酷な方法であり、猫にとって一生の問題となる」と述べ、知事を始めとした上院多数派が動物の福祉に重点を置いた判断をしたことを誇りに思うと語りました。
ディクローは日本ではあまりなじみのない言葉で、その実態についても知られていないのが現状です。
しかしアメリカでは飼い主や、その家屋や家具を守るために頻繁に行われている一般的な手術です。
ディクローには賛否両論があり、反対派は今回のニューヨーク州の決定のように、動物愛護や動物福祉の観点から手術が非人道的であると訴え続けてました。
一方賛成派はディクローを、特に子供や年配の居住者が猫との接触によって思わぬ怪我や感染症を負う危険性を取り除くものだとして、飼い主の権利だと主張しています。
ディクローを巡る賛否と猫への影響
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ディクローの是非を巡る動きはこれまでもアメリカの各州で起きており、ニュージャージー州やコロラド州デンバー、カリフォルニアのいくつかの都市などで議題に上がったり、条例が制定された経緯があります。
ディクローは人間のように、伸びてきた爪をその都度切る、といったものではなく、爪が金輪際生えてこないよう関節ごと切除してしまう、という残酷な手術です。
手術の際の痛みはもちろんのこと、猫はその後の一生で激しい慢性的な痛みや、その他の医学的または行動上の問題を引き起こすようになります。
爪を失った猫は自らの体重に対するバランス感覚を失い、足の関節や脊髄に負担をかけるようになり、早期の関節炎や背中の痛みを招くようになります。
また本来自然の中で生きる猫にとって爪を失うことは、危険からの脱出、高いところへの移動、バランスの維持といった、生活の様々な局面で重要な役割を果たす能力を発揮できなくなることを意味します。
今回のニューヨーク州の決定には、世界の多くの動物愛好家や獣医師が賛成の声を挙げています。
リンダ・ローゼンタール下院議員は今回の決定について「この野蛮な慣行を続けることを許す理由はありません」と語り、他の州もニューヨークに続くことに期待していると述べました。
一部の意見では、ディクローを禁止することは、猫が避難所(シェルター)や保健所に連れていかれる要因になるといったものがあります。
飼い主の言うことを聞かず、爪であちこちを引っかいたり、家族を傷つけたりする悪い猫はもうウチにはいらない!といった感じでしょうか。
しかし猫だけでなくペットを飼うということは、一人の家族を受け入れるのと同じことです。
避難所や保健所に入れられた動物たちの多くが安楽死させられている現状があります。
ディクローという人間側の都合だけで行われてきた慣習にメスが入れられた今回のニューヨーク州の決定は、動物たちの目線に寄り添い、共に歩む方法について学ぶきっかけとなるかもしれません。
References:NewYorkState,mnn