暴力的なゲームの制作が及ぼす影響についてMortal Kombat 11の開発者が語る

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© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc.

日本での発売は見送られていますが、海外では絶大な人気を誇る格闘ゲーム「Mortal Kombat 11」が先日(4月24日)発売されました。

このゲームの最大の特徴はなんといってもそのゴア描写です。

初代Mortal Kombatからして残虐なフィニッシュシーン「フェイタリティ(Fatalities――敗者にとどめを刺す一連のカットシーン)」でお茶の間と教育関係者たちの度肝を抜きました。

シリーズはその後ハードの性能が高くなるにつれて、より過激でより詳細な暴力を描くようになります。

日本と海外ではゴア表現に対する感受性が違うのか?と思うほど最近のシリーズの暴力性(とくにフェイタリティ)は、それを喜んでプレイする人たちと製作者に対してある種の不信感さえ抱かせるものです。

 

プレイする側はあくまでエンターテインメントとして見ていますが、作る側はリアリティを追求するためにゴア表現について深く掘り下げる必要があります。

これは作り手が多くの人体――それも解剖学的な人体――について学ぶことを意味しています。

Kotakuの行ったインタビューではMortal Kombat 11の制作者が当時の作業を振り返っています。

そこで語られたのは、暴力描写にまみれる開発環境が心身に悪影響を及ぼす実例でした。

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開発のために現実の暴力描写を参考にする

 

Kotakuのインタビューに匿名で応えたあるMortal Kombat 11の開発者は、仕事場で多くの(実際の)暴力シーンについて調査していたことを明らかにしています。

彼は2018年を通してゲームの暴力描写にリアリティを与えるため、現実の資料に囲まれた日々を過ごしてきました。

彼は職場を歩き回ると、別の開発者がYouTubeでぶら下がった男(おそらく死んでいる)を見ているのに気付いたと言います。

また他のデスクの開発者は殺害された犠牲者の写真を見ていました。

こうしたゴア描写に囲まれた生活はすぐさま心身に悪影響を及ぼすようになります。

 

私はこれらの非常にグラフィカルな夢を見るようになりました。これはとても暴力的なものなので、なるべく眠らないために何日も起きているようにしています。

 

この開発者によると暴力的なコンテンツに取り組むスタッフの精神的なケアについて、スタジオ内での正式なプロセスや手続きはありません。

 

作り手と経営陣の暴力に対する認識の違い

 

© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc.

 

Mortal Kombat 11のパブリッシャーであるWarner Bros. Gamesと開発会社であるNetherRealmはこの問題についてコメントを避けていますが、アートディレクターであるSteve Beran氏は、これをあまり深刻な問題だとは捉えていません。

Beran氏は暴力的な描写に関わるスタッフが少なからず何らかの影響を受けるだろうことは認めながらもそれは控えめなものだとし、これが単なるアニメーションでしかないと語っています。

 

インタビューに応じた開発者はある同僚が心に抱えた問題について言及しました。

それによるとその同僚は、内臓を想像することなしには犬を見ることができなくなったということです。(フェイタリティでは対戦相手の内臓が露出するシーンが頻繁にあります)

この2つの意見をみると、現場とそのトップや経営陣との間には暴力描写にまみれることへの考え方が異なっていることがわかります。

 

先の開発者は最終的な製品(Mortal Kombat 11)が人を傷つけてしまうほどダメージを与えるものではない、ということについて多くの話し合いがあったと言います。

これはプレイヤー側がフェイタリティを始めとしたMortal Kombatの暴力描写をエンターテインメントと割り切れるようにするということです。

しかし作り手側は暴力に長期間さらされ続けてきました。

 

開発者は暴力的なゲームの制作プロセスはそこに携わる人々にとって有害になると考えています。

 

時には燃え尽きたり自分を見失うこともあります。少なくとも開発者が彼らの同僚とこれらのことについてお互いに話し合っていることを願います。私たちには周囲に支えてくれる人たちが必要なのです。

 

開発に関わった何人かは、後にセラピストからPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断を受けました。

 


 

現在のゲーム開発は分業が進み、この開発者のようにアニメーションに従事する場合には、特定の事柄について長期間調査したり接したりする必要も出てきます。

たかがゲーム内のアニメーションだといっても、Mortal Kombatという世界でも類をみないほどの暴力描写を持つゲームとなれば、どんな人でも精神的に参ってしまうことがありえます。

 

ゲームをプレイする側は派手なアクションと笑ってしまうほどのゴア描写を楽しむだけですが、その裏には納品期間だけでなく様々な苦労や心労があります。

ゲームの開発環境については昨今いろいろな問題(休暇や賃金、最後の追い込みなど)が出てきています。

こうした問題と共に、開発者の心理的、精神的な側面にも光があたるようになってほしいものです。

 

 

グロ注意! Mortal Kombat 11 – Official Announce Trailer

 

 

Source:Kotaku