アメリカのトランプ大統領は、先週末に起きた2つの悲惨な銃撃事件を受けて暴力行為を非難する声明を出しました。
トランプ大統領は声明で「社会における暴力の美化を止めなければならない」と述べ、若者が暴力に走る背景の一つにビデオゲームの存在があると指摘し、ゲーム業界を非難しました。
アメリカでは先週2件の銃撃事件が立て続けに起きています。
8月3日、テキサス州エルパソのショッピングモールで銃撃があり、22人が死亡、24人が負傷しました。
またその翌日にはオハイオ州デイトンで別の襲撃事件があり、9人が死亡、27人が負傷しています。
いずれも容疑者は20代の男性でした。
暴力事件の後、常にやり玉に挙げられるビデオゲーム
トランプ大統領は8月5日に行った演説の中で、問題に対処するためには銃規制も含めた対策を考える必要があると語る一方で、インターネットやビデオゲーム、そしてゲーム業界を事件の背景にある一因だとしてやり玉に挙げました。
大統領は、大量殺人事件の暗い部分に光をあてなければならないと述べ、それにはまずインターネットの持つ危険性について認識する必要があると訴えています。
そしてインターネットが人身売買や違法薬物の売買、その他の凶悪犯罪に利用されており、また精神的に弱い人間が認知されるための手段を提供しているとして、ソーシャルメディアを含めてその危険性は無視できないとしました。
さらに大統領は、社会の中で暴力への賛美が行われていることに言及し、その最たるものとしてビデオゲームを挙げました。
今日、問題を抱えた若者たちが暴力を称賛する文化に囲まれるのはあまりにも簡単だ。私たちはこれを止めるか大幅に減らさなければならず、それはすぐにでも開始する必要がある。
ゲームを非難する姿勢はトランプ大統領だけでなく共和党員の中にも広がっています。
共和党員で(銃撃事件の起きた)テキサス州副知事のダン・パトリック氏はゲーム業界を名指しし、「昨今の銃乱射事件を見て何が変わったのかを考えるとき、私は若い人たちに殺すことを教えるビデオゲーム産業について考えます」と語りました。
こうしたいわれのない非難に対し、アメリカのゲーム業界団体ESA(エンターテインメントソフトウェア協会)や、ゲーム開発や産業を支援するNPO団体であるIGDA(国際ゲーム開発者協会)などは、ゲームと暴力との間には相関性がないとする声明を発表しています。
IGDAは声明で事件の犠牲者と家族に哀悼の意を示した後、「ビデオゲームを非難することは目前の広範な問題から目を背けることにつながる」と述べ、トランプ大統領や共和党議員に対し冷静な判断をするように求めました。
またこれまでいくつもの研究結果がビデオゲームと暴力との間に相関性がないことを明らかにしているとして、誤った情報ではなく正しい情報を伝えるために努力していく必要があると述べました。
ESAもまた同様の立場をとっていて、ビデオゲームがストレスの緩和や、友人、家族との楽しい時間につながっており、また新しい医療や教育のツールなどとしても社会に貢献しているとして、非難は適切なものではないと主張しています。
実際世界には数十億人のゲームプレイヤーがいるとされますが、昨今の悲惨な暴力事件の多くがアメリカで起きているのも事実です。
もしゲームと暴力事件に相関関係があるならば、世界中でこうした事件が起きているはずです。
もっともアメリカは人口100人当たりの銃の保有率が世界一の国でもあります。
トランプ大統領は暴力的なゲームへの取り締まりをはじめ、インターネット上の言葉の暴力を監視し、大量殺人者に対する厳罰化を進めると述べていますが、銃規制に関しては明確な発言をしていません。
暴力事件の度に引き合いに出されるビデオゲームとゲーム業界――今後も多くの議論がなされることだけは確実でしょう。
References:GamesIndustry.Biz,wccftech