ハワイでサメとエイの捕獲を禁止する法案が提出される

自然

ハワイの2人の州議会議員がサメとエイを守るための法案を議会に提出しました。

昨今海洋生物保護や環境保全の動きが活発になっていますが、捕食者としてイメージの悪いサメやエイについては無視されがちでした。

 

今回の法案に関わった議員たちはサメやエイを保護することが彼らだけでなく海洋全体の保護につながることを主張しています。

 

サメやエイを捕獲したら罰金――その額は最高で1万ドル

 

photo credit: BONGURI 20160115 Nagoya Aquarium 5 via photopin (license)

 

Nicole Lowen議員とMike Gabbard議員の2人はサメやエイを捕獲、虐待したり、または殺したりした者に対して罰金刑を科すことを軸とした法案を1月22日に議会に提出しました。

それによると罰金額はサメやエイの種類を問わず、1回目は500ドルから始まり、3回目にはそれが1万ドルに及ぶ可能性があるとしています。

法案提出の理由には、サメやエイという頂点の捕食者を守ることがサンゴ礁や海洋の保護につながることをあげました。

またこれには研究や文化的慣行、および公共の安全のための免除が含まれています。

 


 

Lowen議員は2014年にも同じような法案を提出していますがそのときは採用が見送られています。

 

Gabbard議員は海の回復力にとって彼らが重要であると述べています。

 

サメやエイは主要な海洋種であり海の回復力にとってとても重要な存在です。彼らは不必要な殺害や摂取から法の下で守られるに値します。

 

ハワイは2010年にフカヒレの販売と所持を禁止する法案を可決しています。

 

サメの重要性

 

 

サメは大衆文化の影響から狂暴で害のある生物として認識され続けてきました。

ハンティングの対象になったり積極的な排除を奨励される例も数多くありました。

しかし海洋とその生態系への理解が進むなかでサメやエイといった捕食者たちの役割が海洋のバランスを保つ上で重要であることがわかってきました。

 

海洋の保護と回復のために活動している非営利団体OCEANAによると、サメは間接的にサンゴ礁や海藻などを守っているといいます。

 

サンゴ礁の生態系からサメを取り除くことによってハタなどの大型の捕食魚が増え、より小さい藻などを食べる草食の魚たちを捕食していきます。

そして藻類が増殖しサンゴ礁の生態系が破壊されてしまいます。

 

OCEANAによるとある研究ではサメの消失がその下にいる捕食集団であるエイの数を増やしたことが示されたといいます。

増殖したエイたちはホタテ貝を食べつくしてしまい漁場が閉鎖するほどでした。

エイたちはホタテ貝を食べつくすと今度はアサリなどの他の二枚貝に矛先を向けるようになり、この影響でアメリカの多くのレストランからクラムチャウダーのメニューが無くなり始めています。

 


 

OCEANAはサメの保護について経済的な面でも鋭い指摘をしています。

一頭のサメを捕獲して得られる一時的な報酬と、彼らを生かし観光で収入を上げる方法とを比較してどちらが賢い判断なのかと問いかけました。

 

試算では、例えばバハマの漁師はサメ一頭で50ドルを得ますが、サメを生かしサンゴ礁を守ればダイビングスポットとして25万ドルの価値になります。

また――別の種ではありますが――ジンベエザメ1頭はその生涯で200万ドルをもたらすという試算を出しています。

 

OCEANAはサメが海洋の健康を表す指標になること、そして彼らを守ることが漁業や観光にとって必要であることを訴えています。

 

 

 


 

自然や動物たちはそれ単体で存在しているのではなく他のものと密接に結びついています。

だからといってそれで生計を立てている人たちを無視して環境保全に突き進んだとしたらまた別の問題が生まれてしまうでしょう。

 

今回の法案がどのようになるのかは分かりません。

しかし自然や生命がどこかでつながりあっているという事実に多くの人が気づくきっかけになればそれが一番いいことのような気がします。

 

 

References:mnn,WestHawaiiToday,OCEANA