近年生命が存在する可能性のある星が次々と発見されています。
有名どころでは地球から20光年ほどの距離にあるグリーゼ581cや、最も太陽系から近い位置にある4.2光年先のプロキシマ・ケンタウリbなどがあります。
これらは恒星の周りを周る惑星で、いわゆるハビタブルゾーンに位置していると考えられています。
太陽から近すぎず遠すぎないという絶妙な位置にある星には水と生命が存在している可能性があります。
惜しまれつつも亡くなった物理学者のスティーヴン・
ここ最近の観測技術の発達も手伝い、新たな恒星とそのハビタブルゾーン内の星が数々と見つかっています。
いよいよ地球外生命体と接触する日が近づいたのかと色めき立っている人たちをよそに、ハーバード大学の研究者が残念な研究結果を発表しました。
もしかしたらそこには生命など存在しない可能性があります。
地球における生命の誕生の歴史
ハーバード大学の研究者であるManasvi Lingam氏とAbraham Loeb教授は、生命の存在が期待されている惑星にはそもそも十分な光合成を起こすだけの放射線が届いていないかもしれないことを発表しました。
地球がどのような進化を遂げて生命が存在するようになったかを調査した結果、それらの星たちが地球と同じような環境になるには恒星が小さすぎることを指摘しました。
なぜ光合成が生命の存在する星の発見と関係あるのでしょうか。
そこには地球が酸素に満ちた星になるまでの重要なプロセスがありました。
地球が誕生した当時はまだ生命と呼べるものは存在していませんでした。
しかし30億年ほど前に光合成細菌が出現し始めます。
彼らは二酸化炭素とメタンで満ちた地球の大気を光合成により酸素と窒素で満たしました。
Loeb教授は光合成をする生物が出現したかどうかが生命誕生の鍵を握っていると話します。
光合成とは光によってまとめる(合成する)ということを意味します。それは植物や藻類そしてバクテリアが太陽光を化学エネルギーに変換しその活動を促進するプロセスです。そして副産物として放出される酸素は生命に必要なエネルギーになります。
生命が誕生するには水のほかに酸素が必要になりますが、現在発見されているハビタブルゾーン内の星が地球と同じプロセスをたどってきたという証拠はありません。
Loeb教授たちはむしろその可能性が低いことを明らかにしました。
生命誕生には恒星の大きさが関係している
Loeb教授たちは恒星とそのハビタブルゾーン内の星の大きさや距離を元に、地表にとどく紫外線の値を計測しました。
そしてその値を地球と太陽との関係から導き出した値と比べました。
その結果、低質量の恒星は生命を誕生させるだけの紫外線を供給できないことがわかりました。
プロキシマ・ケンタウリやTRAPPIST-1(トラピスト1――39光年先にある恒星で周囲にハビタブルゾーン内の惑星が存在している)のような恒星の周りの惑星はおそらく地球のような生物圏を持っていないでしょう。
ハビタブルゾーンは恒星の大きさも考慮されていますが(恒星が大きいほどゾーンも外側に移動する)恒星自体の温度をどう仮定するのかはモデルによって異なります。
基本的に地球と太陽の関係から導き出された値を用いることになりますが、実際の恒星がどのような組成をしているのかについて全てを理解することはできません。
つまり現在わかっている恒星の大きさとハビタブルゾーン内の惑星のデータからは、太陽と地球の関係から導き出した生命誕生の方程式を当てはめることができないということです。
Loeb教授たちの研究は、他の星での光合成の理論についてよく理解されていないことを示しました。
今後は恒星とそのハビタブルゾーン内にある星を発見することが、生命体のいる星を見つけるための最善の方法ではなくなる可能性があります。
Loeb教授は酸素のある惑星を見つける試みについては引き続き必要とされるとし、同時に新しい方法が用いられる可能性を指摘しました。
光合成によって生成された酸素は人間のような複雑な生活をする存在の前提条件です。それは知性の進化に必要とされています。そしてこれからは彼らの無線信号や巨大な人工物からのサインを介して生命を見つける可能性が開かれています。
酸素が十分にある星には地球における人間のような知的生命体が存在している可能性があります。
そして私たちが外の世界に目を向けるように、彼らも同じようなことをしている可能性は十分にあるでしょう。
幸い観測機器は年々進化しています。
天文学者たちが宇宙の向こうからのメッセージをキャッチする日は案外近いのかもしれません。
Source:universetoday