昨年ニュージーランドのクライストチャーチ北部で発見された珍しい鳥の化石は、世界最古の鳥類の一つであり、くちばしに歯を持った珍しい“骨歯鳥”のものであったことがわかりました。
化石が発見されたワイパラ・グリーンサンドの発掘場では今年、世界最大となるペンギンの祖先の化石が見つかり大きな話題となりました。
この場所では他にも数多くの化石が発見されていて、今回の歯のある鳥もそのうちの一つでした。
化石はアマチュア古生物学者のリー・ラブ氏が発見し、彼の古生物学への情熱に寛容であった妻ルースさんの名を取り、「Protodontopteryx ruthae(プロトドントプテリクス・ルーシー)」と名付けられました。
Protodontopteryx ruthaeは6200万年前に現在よりも熱帯気候だったニュージーランドに生息していたと考えられています。
この鳥の子孫たちは後に世界で最も大きい鳥として空を飛び回るようになります。
くちばしに歯のある鳥の化石はこれまで北半球でしか確認されていなかった
Image Credit:Canterbury Museum
カンタベリー博物館の学芸員であるポール・スコフィールド氏は、くちばしの外側に沿った形で歯のような突起を持つこの鳥の発見は、海鳥がどこでどのように進化を遂げてきたのかについての一般的な見解を覆すものだと述べます。
私たちがこの化石を発見するまではこれらの種は全て北半球で発見されていました。皆、進化はそこで起きたのだと考えていました。
Protodontopteryx ruthaeは「Pelagornithidae(ペラゴルニス科)」と呼ばれる古代の海鳥に属していて、これらの種はこれまで全て北半球でしか発見されていませんでした。
南半球で歯を持つ鳥の化石が発見されたことは、古代の海鳥の生息範囲や進化の過程についての新たな理解につながります。
ドイツのゼンケンベルク自然博物館のジェラルド・マイヤー氏はこの発見を「本当に驚くべきものだ」と賞賛します。
化石は歯のある鳥の最も完全な標本の1つであるだけでなく、これらの謎の鳥の進化を理解するための骨格の特徴も示しています。
くちばしについた歯がどのように利用されていたのかについてははっきりとは分かっていません。
しかし科学者たちはその形状や当時の環境などから、魚やイカなどの軟体動物を捕らえるために使われていたのではないかと推測しています。
現代に生きる鳥には歯がありません。
進化の過程で鳥類がなぜ歯を失ったのかについてはいくつかの考えが存在しますが、南半球で最初となる歯を持つ鳥の化石が見つかったことは、この謎を解くための重要なヒントを古生物学者たちに提供することになります。
骨歯鳥の子孫は250万年前に絶滅するまでに、世界で最大の大きさを誇る鳥として進化しました。
発見されたProtodontopteryx ruthaeの化石の大きさは現代のカモメほどでしたが、この種の子孫たちは最大で6.4mもの大きさに進化しています。
発見された化石は保存状態が良好なことから、古生物学者たちはこの“歯を持つ鳥”についてさらに学べることを願っています。
先日も人間と同じ大きさの巨大なペンギンの化石が見つかり話題となりました。
多くの固有種と手つかずの自然が残るニュージーランドは、現代はもちろん過去においても、驚くような生物たちの宝庫です。
References:Canterbury Museum