2020年の9月、アメリカ南西部の各地で大量の鳥の死骸が発見されました。
意識を失い墜落したかのように見えるこれらの鳥は、ツバメやムシクイなどの渡りをする種で、専門家は、当時発生していた大規模な山火事に原因を求めました。
その後、アメリカ地質調査所の国立野生動物保護センター(NWHC)や、ニューメキシコ州立大学の科学者によって死骸の分析が行われ、最終的に大量死の原因が、飢えによるものであることが明らかになりました。
9月の大量死では、市民の協力もあり、合計一万羽以上の鳥が記録されましたが、実際にはそれ以上の数が死亡していると考えられます。
大量死の原因は飢えによる衰弱
NWHCによる剖検では、標本の80%が典型的な飢餓の兆候を示していました。
多くの鳥には、筋肉の収縮、腸管の出血、腎不全、体脂肪の喪失が認められました。
40羽を剖検したNWHCの所長であるジョナサン・スリーマン氏は、「死の原因は飢餓による衰弱である」と説明し、「因果関係を特定するのは難しいが、何らかの気象イベントが、鳥の渡りと食料の補給を難しくした可能性がある」と述べています。
死んだ鳥は脂肪がなく筋力が衰えていた (Credit: Allison Salas)
最初の鳥の死亡は8月20日、ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場で確認されました。
目撃者は、鳥たちが無気力になり一つの場所に集まって死んだ、と証言しています。
その後死骸は、9月9日と10日にかけてニューメキシコ州の至る所で発見され、前例のない出来事に多くの人が不安を覚えました。
大量の死骸が見つかった時、アメリカ南西部(カリフォルニア)では大規模な山火事が発生しており、これが渡り鳥の体にダメージを与えた可能性がありました。
しかし剖検の結果、鳥の肺には煙による損傷がなく、またウイルス性疾患や寄生虫、農薬などのテストも全てが陰性でした。
これは鳥が山火事を避けたものの、途中で餌を得られなかったことを示唆しています。
大量死の原因を調査してきた、ニューメキシコ州立大学の生物学教授であるマーサ・デズモンド氏は、鳥の筋肉が非常に衰えていたことから、「鳥は短期的にではなく、長期的な飢餓状態にあった」と述べ、山火事よりも、それをもたらした異常な乾燥こそが死の原因であると指摘しています。
渡りをする鳥は休憩や捕食をはさみながら、数千キロを飛行します。
餌場や休憩場所、そして飛行ルートは、代々受け継がれてきた貴重な記憶です。
しかし近年、異常気象や開発などにより、鳥たちの居場所が狭められています。
NWHCのスリーマン氏は、「大量死が気候変動に直接関係しているかはわからないが、異常気象が発生する確率は明らかに高くなっている。野生生物の大量死は今後も起こるため、追跡していく必要がある」と述べています。
鳥以外の動物も異常気象の影響を受けてそうだね
大量死は自然からの警告なのかもしれない……
Reference: The Guardian