顔は多くの情報を見る人に与えます。
喜び、うれしさ、苦痛、怒り、などの感情は顔の表情を変化させます。
人は他人の顔の表情から、相手が今何を考えているのか大体の予測がつきます。
しかし相手が動物の場合はどうでしょうか?
もしペットの考えていることが顔の表情から分かるとしたら、飼い主にとってこれほど嬉しいことはないでしょう。
動物の顔の表情に関する研究が行われるようになったのは、比較的最近になってからです。
今回イギリスのノッティンガム・トレント大学のポスドク研究員ローレン・フィンカ氏たちのグループは、猫の顔の表情筋を調べることで、猫が苦痛の際に見せる表情に一定の法則があることを発見しました。
この研究では猫が“顔をしかめる”ときの筋肉の動きをデータ化し、それを痛みの程度と関連づけています。
この結果を知れば、ペットの猫が痛みを感じているかどうかを判別できるようになります。
猫の顔の表情の変化から痛みを察することができる
猫の痛みを傍目から判断するのは非常に困難な作業です。
動物の顔の筋肉の動きを見ることは感情の理解につながりますが、種によって顔のつくりや筋肉の構造が異なるので、全ての動物に共通する方法は存在しません。
ノッティンガム・トレント大学のローレン・フィンカ氏は、猫だけでも、例えば平らで丸い顔のペルシャ猫と、耳の大きく鼻の長いシャム猫とでは、顔の表情が非常に異なると指摘しています。
また顔の表情を見ることが、苦痛を見分けるための最も適した方法とは限りません。
猫は痛みを感じた場合、どこかに身を隠したり、急に静かになったり、また反対に全く痛みを感じないかのように走り続けたりすることもあります。
つまり、人間が猫の顔の表情だけを見て苦痛の度合いを完全に理解するのはとても難しいということです。
それでも、もし顔の表情の変化と痛みとの間にある何らかの関連性を明らかにすることができれば、猫と飼い主との間のより良い関係の構築に役立てることができます。
そこで研究チームは、猫の顔の表情の変化に焦点をしぼり、ここから一定のパターンを見つけるため機械学習のアプローチを採用しました。
これは骨を計測するための技術を応用したもので、1,000枚近い猫の顔の写真をデータベース化し、筋肉の相対的な位置や、収縮や弛緩が起きた際の顔の変化が、痛みとどう関連しているのかを分析するものです。
比較対象には手術を受けた猫が見せた苦痛の表情を使い、それが通常時の表情とどう違うのかを特定していきました。
分析結果は、いくつかの重要な顔の動きが苦痛と関連していることを見出しました。
以下は猫が痛みを感じた際の顔の動きの特徴になります。
Image Credit: Lauren Finka, Author provided
(ⅱ~ⅳ) 口と頬の領域が小さくなり、鼻と目の方に引き寄せられていく。
(ⅴ) 目が狭く、または細くなる。
(ⅵ) 耳が微妙に変化する。外側に向かう。
(ⅶ) 鼻は目から離れて口の方向に向かい、顔の左側に少し傾く。
この分類は、猫の種類の多さのため、全ての猫に共通するものではありません。
また猫が苦痛を感じた際にこれら全ての動きが起きるとも限りません。
しかし日頃接している飼い主は――獣医などの特定の場合にしか接しない人と異なり――自分の猫の表情についてよく理解していることから、この痛みに関する分類はペットの猫の苦痛を知るうえで役立つ可能性があります。
フィンカ氏はこの新しい分類法が、将来、ペットの猫の苦痛の度合いを測るアプリの開発につながることに期待しています。
またこの研究手法を用いることで、苦痛以外の様々な感情や表現についても分類することができ、ペットとより良いコミュニケーションをとる方法の開発にもつながるだろうとしています。
上の写真の猫は、あまり苦痛を感じているようには見えないかもしれません。
顔の表情から猫の苦痛を的確に判断するには、日頃どれだけペットと接しているのかが大きく関わってきます。
なぜなら猫の“通常時の表情”を知らなければ、そもそも比較ができないからです。
結局のところ、ペットの苦痛にいち早く気付くためには、飼い主の愛情こそが欠かせない、ということなのかもしれません。
猫の顔の表情だけで考えていることがわかるなんてすごいね~
研究が進めばいろんな動物と会話できるようになるかも!
References:The Conversation