動物の死骸に卵を産み付け子供を育てるシデムシを観察した結果、若い母親と年長の母親との間で繁殖時の行動に違いがあることがわかりました。
シデムシの一種である「モンシデムシ (Burying beetle)」は動物の死骸を見つけるとその下に穴を掘り、腐敗を防ぐ分泌物で覆いながら卵を産み付けます。
生まれてきた幼虫は死骸を餌として成長しますが、場合によっては母親が子供に餌を与えることもあり、こうした行動は、アリやミツバチなどの社会性のある種以外の昆虫ではほとんど見られることはありません。
英国エクセター大学の科学者たちは、モンシデムシの母親たちが死骸の大きさに基づいて繁殖をコントロールしていることを発見し、その環境変化に対する柔軟性は他に類を見ないものであると指摘しています。
年齢によって餌に対する行動を変えるモンシデムシ
研究では年齢の異なるモンシデムシの母親たちを複数観察し、若い母親ほど餌の大きさに適した数の卵を産み、年齢が高い母親ほどそうした配慮をしないことが明らかになりました。
若い母親はサイズの異なる死骸に適応し、生まれてくる幼虫が餓死しないよう、卵を産む数を絶妙にコントロールしました。
餌となる死骸の大きさを無視して卵を産んだ場合、生きられない幼虫が出てきてしまうおそれがあるため、餌の大きさに合わせて出産数をコントロールすることは、種を存続させるために必要な行動と言えます。
一方で年長の母親は、餌の大きさに合わせることなくできるだけ多くの卵を産みつけました。
Animal Behaviourに掲載された研究の著者の一人で、エクセター大学の生態保護センターのニック・ロイル(Nick Royle)博士は、「柔軟さは、急速な環境の変化に適応するのを助ける」と述べ、食べ物が豊富なときに多くの卵を産み、そうでない場合には少なく産むというモンシデムシの行動は理にかなっていると説明しました。
また年長の母親に柔軟性が欠けていた点については、「再び繁殖できる機会が得られないかもしれない個体にとっては、状況に関係なく全てを投資することが最善の戦略である」と述べています。
実験では、利用可能な餌が少なくなった場合、若い母親が自分の食べ物を節約し子供に分け与えるという行動を見せたのに対し、年長の母親は餌の大きさによって行動を変えなかったことが明らかになっています。
若い個体はたらふく食べなくてもなんとかなりますが、年をとった個体は今後繁殖という任務に携わる可能性が低いため、自分のためだけに十分な餌を得ようとします。
ロイル博士は、「この種でこのような年齢の違いによる柔軟性が見られたのは、私たちの知る限り初めてのことだ」と述べ、この結果は、生物が環境の変化にどのように適応しているのかを理解するのに役立つはずだと付け加えています。
モンシデムシみたいに自分の子供を世話する昆虫は珍しいんだって!
繁殖しないとわかった途端に食べまくるという柔軟性はなかなかのもの……
References: EurekAlert