2018年10月、カナダのトロント・ピアソン国際空港で、ロシアから帰国した一人の密輸業者が逮捕されました
不審な男を発見したのは、空港で爆発物や麻薬などを探知するために働くビーグル犬で、警察が所持品を調べたところ、バッグの中から生きたヒル5000匹が入った容器が出てきました。
ヒルは南極を除く全ての大陸に生息し、古くから瀉血や医療に用いられてきました。
男が持ち込んだヒルも医療用で、一匹10ドル前後の値がつきます。
男はヒルについて、「自宅のランの栽培のために所有していた」と主張していますが、当局はこれらのヒルが、個人売買のための商品であると推測しています。
男は医療用に使われるヒルを密輸した罪で起訴されています。
医療用のヒルは希少
ヒルの吸血行為は血の凝固を防ぐため、古くから血を抜き取る瀉血や、組織の血行を改善する治療に用いられてきました。
このヒルの持つ特殊な能力は、ヒル自体を希少な存在にしました。
ヨーロッパでは瀉血に利用するために乱獲され、19世紀初頭には保護動物に指定されました。
現在医療用のヒルは、ワシントン条約によって輸出入が制限されています。
当局が頭を悩ませているのがヒルの今後です。
5000匹ものヒルを飼っていられるスペースはなく、また裁判での証拠にもなるため処分するわけにもいきません。
さらにこれらのヒルはカナダの固有種ではないため、どこかに放つこともできません。
オンタリオ州の野生生物取締局のアンドレ・ルパート氏は、ヒルの新しい家を探すべくあらゆる場所に電話をかけましたが、反応は薄いものでした。
カナダの医療機関が年間で購入するヒルは500~1000匹であり、どの病院にもこれ以上の数を受け入れる余裕はありませんでした。
最終的に、トロントにあるロイヤルオンタリオ博物館と、ニューヨークのアメリカ自然史博物館と交渉が成立し、それぞれ50匹と1000匹が引き取られることになりました。
ルパート氏は残りの3950匹の面倒を見ながら、現在もヒルの引っ越し先を探しています。

ヒルのなかでも人間の血を吸うのはそんなに多くないんだよ

野生のヒルに血を吸わせると感染症のリスクがあるから気を付けよう……
Reference: National Geographic