海鳥をフェレットとネズミから救うプロジェクトが始まる 北アイルランドのラスリン島

動物
(Becky Matsubara/Flickr)

北アイルランドの最北にある小さな島ラスリンには、ニシツノメドリをはじめとしたユニークな鳥が数多く生息しています。

東から西まで6Km、北から南までが4Kmの逆L字型をしたラスリン島は、人口150人ほどの島で、豊かな自然と数万羽を超える鳥を見に、国内外から毎日多くの人が訪れます。

しかしこの島には、観光客が押し寄せるはるか以前から、ネズミとフェレットが侵入し我が物顔で闊歩していました。

ネズミは100年以上前、フェレットは1980年代に島に入ってきたと考えられており、このうちフェレットには、島で増えすぎたネズミとウサギを減らす役割が期待されていました。

ところが彼らは反目することなく、今では共通の獲物、すなわち海鳥とその雛を襲っています。

 

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて絶滅のおそれがあるとされるニシツノメドリの数は、1999年以降で40%減少していて、島の生態系を保ち続けるには早急な対策が必要です。

現在ラスリン島では、在来の鳥を保護するための取り組みが進められています。

目標は、2026年までに全てのフェレットとネズミを駆除し、島全体を鳥のための安全な避難所とすることです。

 

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フェレットとネズミを駆除する方法

 

フェレットはヨーロッパでは古くから狩りに用いられており、げっ歯類などの巣穴を見つける能力を持っています。

しかし1980年代に島に持ち込まれたフェレットは、ネズミやウサギには目もくれず、数が豊富で容易に狙うことのできる鳥とその雛を狙うようになりました。

 

フェレットは肉食の捕食者で可能なら鳥も食べる (zoofanatic/Flickr)

 

ラスリン島は、国際的にも重要な海鳥のコロニーがいくつもある保護地域で、30種以上の鳥、数万羽が生息しています。

鳥のなかにはミツユビカモメやニシツノメドリといった近年数が激減している種もあり、観光を収入源の一つとしている島としては、自然の状態を回復するための方法を見つけ出す必要がありました。

そこでRSPB(英国王立鳥類保護協会)の自然保護科学者であるジェームズ・クリンブル氏が中心となったチームが1年かけて島を調査し、外来種を駆除する策を考案しました。

その方法は、島全体に電力を通し、250メートルごとにフェレットやネズミを捕獲するワナを設置することです。

事前の調査によれば、島には複雑な地形が多く、崖の下やくぼみに点在する草地などにワナを仕掛けるには、作業員の高度なスキルが求められます。

また移り変わりが激しい天候も作業を難しくします。

クリンブル氏は今後行われる作業について、「懸垂下降やロープを扱う技術のほか、全地形対応車や応急措置など、膨大な量のものが必要になるでしょう」と述べています。

 

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駆除プロジェクトが自然保護活動に与える影響

 

人間の都合で持ち込まれた動物を再び人間の都合で駆除するのはあまりに身勝手ではないか――そう考える人がいても何らおかしなことではありません。

しかしラスリンの人々はこの矛盾を理解したうえで、駆除プロジェクトを支持しています。

その理由は、自然や鳥たちを努力によって保護できると示すことが、世界中の似たような状況にある地域にとっての希望になり得るからです。

クリンブル氏は、「自然は危機に瀕しています。私たちは気候変動に目を向け、海での乱獲に注目しています。プロジェクトは、これらの地球規模の問題に立ち向かう緩衝地帯のようなものを提供する最善の方法なのです」と述べています。

 

 

フェレットやネズミを駆除する取り組みは、ラスリン島の生態系の維持を目的とした「Rathlin LIFE Raft project (ラスリン救命いかだプロジェクト)」によって行われ、450万ポンドの資金を元に、島中に電気を巡らせワナを仕掛けます。

今冬からの作業では、無線監視付きのワナ450個と6000個の餌箱が設置され、フェレットとネズミの捕獲が行われる予定です。

 


 

 

かなで
かなで

海鳥は寿命が長くてなかなか増えないから、長期的な監視が必要になるみたいだよ

ふうか
ふうか

勝手に持ち込んだのに今度は出ていけとは、人間の業の深さを感じずにいられないな

 

References: BBC,Rathlin LIFE Raft project