アリを駆除するのはいいこと?世界で最も成功した昆虫の生態と自然界での役割

動物
(Guillaume de Germain/Unsplash)

アリは世界で最も成功している動物の一種で、正確な数をはかるのは困難なものの、およそ1億の1億倍、つまり1京匹が生息していると考えられています。

アリには13,000を超える種があり、南極と北極圏などの少数の島を除けば地球のどこにでも生息しています。

 

普段の生活でアリを見る機会はそれほどないものの、気温が高くなり、甘いものの匂いが漏れ出た場合、家の中で発見することがあります。

お菓子の袋やジュースの空き缶、湿気の多い浴槽などに突然現れるアリの大群は人々を驚かせ不安に陥れます。

ほとんどの人はアリを害虫と認識しているため、家で見つかったアリは殺虫剤で駆除される運命にありますが、本来アリは自然の清掃員であり残り物を片付けてくれる益虫でもあります。

 

ではアリを駆除するのは本当に正しい行動なのでしょうか。

オーストラリアのシドニー大学のターニャ・ラティー(Tanya Latty)准教授は、アリの行動のメカニズムと自然界における役割から、この疑問に対する答えを導き出しています。

 

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アリは暖くなると活発になり家に侵入してくる

 

アリは暖かい日に活発になります。

彼らは乾燥した時期に水分を求めて家に侵入することがあります。

アリが浴室の壁を這っているのは湿度を感知しているからです。

家にアリがいるのは巣が近くにあるだけでなく、最近の大雨によって流されてきたことが理由である場合もあります。

 

小さな隙間にも入り込むことができるアリは、水分や栄養となる甘い匂いを見つけた場合、すぐに仲間を呼び寄せます。

アリは社会性をもつ昆虫であり、何百から数百万もの仲間と一緒にコロニーを作って生活しています。

食べ物を見つけたアリは、地面に特殊な匂いを発するフェロモンを垂らし、他のアリを誘導します。

たった1匹のアリが道しるべとなることで、コロニーから数えきれないほどのアリが食料と水を求めてやってきます。

では家でアリを見つけたらどうしたらいいのでしょう。

 

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アリの侵入を防ぐためにできること

 

(Salmen Bejaoui/Unsplash)

 

アリの家への侵入を防ぐには、まず食べ物にアクセスできないようにすることです。

食べ物の匂いはアリを引き寄せるため、全ての食品を密閉容器に入れるだけでなく、冷蔵庫の後ろの見えない部分やトースターの残りかすなどについても徹底的に清掃を行う必要があります。

またペットフードを長い間放置することも、アリを呼び寄せる要因になります。

 

アリの行列を確認した場合は、彼らが出しているフェロモンを消すために、お酢や漂白剤などで床をきれいにすることができます。

そして壁や床のひび割れを塞ぐことは特に重要です。

家に隙間がなければそもそもアリは侵入できず、壁の隙間や地下に巣を作ることもできません。

 

しかしそれでもアリが侵入してしまった場合は、駆除を考えなければなりません。

ラティー氏は、「アリの問題が手に負えなくなった場合は、自分で殺虫剤をまくのではなく、害虫駆除の専門家に連絡するように」と述べています。

これはアリの巣が主に保護された場所(人間の手が届かない地下や壁の中)にあるためで、一時的に殺虫剤をまくだけでは根本的な解決にならないためです。

また殺虫剤の成分は、アリ以外の昆虫も殺してしまう可能性があります。

これらの昆虫のなかには、テントウムシやカマキリ、ハチなどといった他の植物や動物にとって有益なものも含まれています。

ラティー氏は、殺虫剤を使用する場合は他の昆虫を殺さないように屋外での使用を避け、またアリ用に特別に作られた殺虫剤を使うように勧めています。

 

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巣を破壊する毒が効かないアリの種もいる

 

アリのコロニーには女王がいます。

女王だけが新たなアリを産むことができるため、コロニーを壊滅させるには女王を駆除しなければなりません。

アリの駆除の方法には餌のなかに毒物をまぜ巣を根絶するものがありますが、一部のアリの種は食べ物を腹部に蓄え、それを別の働きアリに分け与えることで毒を希釈するという行動をします。

この働きアリたちはいわば女王アリの“毒見役”であり、この能力によって女王が毒を含んだ食事を摂るのを防ぎ、コロニーを壊滅から守っています。

 

アリは人間にとっても有益な動物

 

(Syed Ali/Unsplash)

 

アリは植物の種を運ぶだけでなく、環境から廃棄物を取り除ききれいにする役割ももっています。

人からすれば害虫に見えるアリは、生態系を正常に保つうえでは欠かせない昆虫です。

ラティー氏は、「アリは有益な捕食者になる可能性がある」と述べ、アリがゴキブリの幼虫を攻撃して殺す例を挙げています。

 

家に侵入したアリが食べ物をあさるのを見るのは、決して心地良いものではありません。

しかし家の周りをいくらかのアリがうろついているからといって巣を全滅させようとするのは、少々行き過ぎた行動かもしれません。

ラティー氏は、「貴重な生物多様性を保護したいのならば、たとえ彼らが台所を占拠したり、ピクニックを台無しにしたりしたとしても、小さな隣人を大目に見てあげることだ」と述べています。

 

 

 


 

 

ふうか
ふうか

アリを見たくないなら、家の中をきれいにして隙間を塞いでおくのが賢明ということだな

かなで
かなで

アリも人間も仲良く共存できるのが一番だねー

 

References: The Conversation