生物多様性を守る活動を行っている、香港のカドリーファーム&ボタニックガーデン(KFBG)は、中国海南島に生息している絶滅危惧種、「海南テナガザル (ハイナンテナガザル)」の個体数が、30を超えるまでに回復したと報告しています。
海南テナガザルは、1950年代に海南島の12の郡の熱帯林に2000匹以上が生息していましたが、密漁や森林の消失などにより70年代には10匹未満にまで数を減らしました。
KFBGは、わずか13匹だけが確認された2003年の調査以後、テナガザルの個体数を回復するために様々な保護活動を行っています。
海南テナガザルの個体数の回復は大きな成果
生涯のほぼ全ての時間を樹上で過ごすテナガザルは、森林破壊や環境汚染、密漁などによりここ数十年で壊滅的なまでに減少しました。
テナガザルは地上に降りないため動向を把握するのが難しく、2003年から行われている保護活動も実を結ぶまでには長い年月がかかりました。
KFBGの保護プロジェクトでは、好物の木の植樹や、木を伐採しない持続可能な農業を地元民に伝えること、さらにはテナガザルを監視するチームへの資金提供やトレーニング、研究者への支援など、幅広い取り組みが行われてきました。
海南テナガザルの保護プロジェクトの責任者であるKFBGのフィリップ・ロー氏は、「これらの協調した取り組みにより、海南テナガザルの生息数は徐々に回復してきており、2011年と2015年には、それぞれ3番目と4番目の家族グループが形成された」と話しています。
絶滅危惧種の海南テナガザル。黒い毛がオスで金色の毛がメス (Credit: Kadoorie Farm and Botanic Garden)
2019年の10月、地元の住民は2匹のテナガザルの美しい歌声を聞きました。
その後調査チームが監視を続けたところ、このテナガザルのペアが、これまで確認されていなかった5番目の家族グループであることがわかりました。
テナガザルは一夫一婦制で、両親と子供数匹からなる小さな家族を形成します。
新しいペアの確認は、十数年にわたる保護活動の大きな成果です。
テナガザルは歌を歌う類人猿として知られ、繁殖時だけでなく、縄張り争いや家族とのコミュニケーションなど多数の場面で、それぞれ独特の歌を歌います。
仲の良いカップルはデュエットをすることもあります。
ロー氏は、「海南の熱帯雨林がこの美しい動物とその素晴らしい歌を失ったとしたら、どれほど悲しいことになるか想像もつかない」と述べ、「テナガザルの個体数の回復は、他の絶滅危惧種の保護に取り組む人たちを元気づける良いニュースである」と強調しています。
海南テナガザルを含む全てのテナガザル種は、IUCN (国際自然保護連合)のレッドリストにおいて、絶滅が危惧される動物に指定されています。
テナガザルは木の上を素早く移動するから、専門家でも見つけるのが難しいんだって
どんな歌を歌うのかな?聞いてみたいね~♪